円売りキャリートレードがブームだった2007年前半までは、日本人のFXプレーヤーも海外のプレーヤーも、円売り一色に全体の持ち高が傾いていた。ところが、今は双方が正反対に傾いていることに気がつかれているだろうか?
 
日本人プレーヤーの持ち高の全体的な傾きは、くりっく365の為替売買動向で推測できる。くりっく365はほとんど日本人プレーヤーだと思われ、その市場国内FX取引に占めるシェアは大よそ10%だそうだ。これでドル円銘柄のネット持ち高を見ると、148,800枚ほどの円売りドル買いだ(7月30日)。1枚(コントラクト)=1万ドルだから、
1,480百万ドルの持ち高だ(ケタ間違っていないよね?)。
 
くりっく365が市場全体を10%のシェアでそのまま反映しているとすると、日本のFX全体では148億ドルほどの円売り・ドル買い持ち高ができていることになる。1円のドル上昇で148億円儲かる、逆なら損する。
他通貨銘柄での円売りも合計すると、さらにこの数倍の規模の円売り外貨買い持ち高だ。
 
一方、海外プレーヤーの持ち高は、シカゴ先物市場のIMMデータにその一部を見ることができる。FX業者の外為ドットコムのページが分かりやすくデータを公開してくれている。シカゴIMM通貨先物
シカゴIMMの持ち高の中でも、non-commercial、つまり投機筋の持ち高の傾きに注目して欲しい。commercial筋の持ち高は、主要には別にある外貨資産負債の為替リスクヘッジ目的だから、それを加えると中立である。
ドル円についてみると、49,969コントラクトの円買い・ドル売り(Yen long)である(8月17日)。1コントラクト=12.5百万円だから、約73億ドルのドル売りである。同様の海外の取引所の通貨先物におけるシカゴのシェアは知らないので、全体推計はできないが、2倍か3倍か? 
 
さらに、日本でも海外でも同じだが、取引所取引とは別に金融機関と顧客による相対の外為先物予約取引が極めて大きな規模であるので、シカゴIMMの持ち高は氷山の一角である。しかし、氷山の一角でも市場全体の持ち高の傾きとしてある程度の指標性があると考えられている。
 
さて日本のFXプレーヤーの円売り・ドル買いと、海外の通貨先物プレーヤーの円買い・ドル売り、どちらに軍配があがるのだろうか? つまりこの先、対円でドルが上がるのか、下がるのかということだ。
グローバルな丁半博打みたいなものだろうか?
 
重要なのは自分投資のタイムスパン 
私の経験では、海外のプレーヤーの方が足が速く、トレンドフォロー志向である。彼らは、はずれれば素早く持ち高を損切りして、持ち高を変える。一方、日本人プレーヤーは逆張り、なんぴんが好きな人が総じて多い。
 
最終的に儲かるか損するかは、自分が設定する投資のタイムスパンに依存する。投資で失敗する初心者の多くは、自分の投資のタイムスパンが不明確だったり、不安定だったりする。仮に、これから数カ月以内に80円割れの円高になり、その後時間をかけて再び90円まで戻る場合を考えてみよう。
 
ドル売りの短期志向の持ち高は、目先当たる。反対に中長期志向で逆張りでドル買いをしたプレーヤーは外れるが、ナンピンして、買い下がり、90円に戻るまで待てれば、儲かる。従って、逆張り志向のプレーヤーは追加投資できる余力と相対的に長い時間持ち高を持続できることが成功の要件となる。
 
ちなみに、金融機関のディーラーはプロだが皆短期志向の組織的な枠組みの中でやっているので、なんぴんはほとんどの場合、禁じ手である。また、人間には「自分の失敗を認めたくない」心理的なバイアスがあり、その結果、なんぴんに傾斜し、反対に利食いは早まる(自分の成功を実現したいバイアス)傾向がある。こうしたヒューリスティックで非合理的なバイアスを克服することは、双方のタイプのプレーヤーの成功のための共通要件である。