「グーグル秘録 完全なる破壊」(GOOGLED:The End og The World As We Know It)
今年5月に和訳が出たこの本、アメリカのジャーナリスト、ケン・オーレッタの著書
今年5月に和訳が出たこの本、アメリカのジャーナリスト、ケン・オーレッタの著書
この本を今読んで改めて感じたのだが、グーグルが既存のメディア、広告業界、出版、音楽、さらにマイクロソフトなどの既存事業、既存業界に対して、「創造的破壊」の力をガンガン及ぼしている。そういう事情が良くかけている。
競争相手と陣地をひとつひとつ奪い合うような時間のかかる競争ゲームではなくて、既存のビジネスモデル、やり方を無力にするような新しいやり方を普及させることで、オセロ・ゲームのように一気にフィールド全体を塗り替えてしまうような競争だ。読んではいないが、以下のような本も売れているそうだ。
インターネットの引き起こす変革にはそういう力がある。だからどの業界でも、企業が必死に買収したり、買収されたりという状況が90年代後半からとても強まった。
日本や欧州に弱くて、アメリカに強く働いている力は、ひとことでいうとこの破壊&創造の力かもしれない。
インターネットの引き起こす変革にはそういう力がある。だからどの業界でも、企業が必死に買収したり、買収されたりという状況が90年代後半からとても強まった。
そういう状況のなかで、既存業界が今一番ピリピリしているのがグーグルだということになる。
その「創造的破壊力」は、やはり日本で既存の通信業界に挑戦した日本のソフトバンク・孫氏の比ではない。
その「創造的破壊力」は、やはり日本で既存の通信業界に挑戦した日本のソフトバンク・孫氏の比ではない。
インターネットにしろ、グーグルにしろ、こういうものや連中が登場して、短期間で急成長して、ビジネス・ゲームの在り方自体を一変させてしまう。こういうところに、良いか悪いかはともかく、アメリカのダイナミズム(成長力)を感じるのは私だけではあるまい。
経済・社会は成熟すると成長が鈍化する。既存のものを壊して、新しいものに変えないと高い成長は維持できない。 この点は「なんで日本だけデフレなの?」シリーズのその2で紹介した東大の吉川洋教授がシュンペーターから引き出している内容と関連している。
経済・社会は成熟すると成長が鈍化する。既存のものを壊して、新しいものに変えないと高い成長は維持できない。 この点は「なんで日本だけデフレなの?」シリーズのその2で紹介した東大の吉川洋教授がシュンペーターから引き出している内容と関連している。
「吉川教授はケインズ学派であり、不況とデフレは需要不足が問題と考える。ただし、その特徴はシュンペーターの議論から多くの示唆を引き出している点だ。「転換期の日本経済」(岩波書店、1999年)では、経済成長について、供給される商品のイノベーションが起こらなければ、つまり同じものばかり生産・供給していれば、経済は需要が飽和する形で成長が止まる(ひとり当りのGDPは増えなくなる)ことを説いている。」
ただしイノベーションといってもいろいろのレベルがある。日本の企業(あるいはカルチャー)は機械や電気製品の機能向上など漸進的な進化には強いが、既存のビジネスモデル自体をひっくり返してしまうような新機軸、新ビジネスの創出は相対的に弱いのではなかろうか。
既成秩序を維持しようとする力が強くて、そうした挑戦は芽のうちに潰されたり、育たなかったり、あるいはそもそもインセンチブが与えられない。
ソフトバンクの孫さん程度の挑戦でも、NTTなどは目の敵にして、なんとかつぶしてやろうとするようだ。
もちろん、ライバル企業の登場を叩くのはアメリカとて同じ。隙があれば買収されてしまう。ただし、新機軸対旧機軸の戦いが、アメリカでは5対5程度なのに、日本では1対9で圧倒的に旧機軸が強い。
なぜ?やはり資本の違いかな。アメリカには新機軸に出資する個人やファンドのベンチャーマネーが豊富だ。それ自体、超格差社会での富の一極集中の結果だけどね。その点日本の金は、大企業や金融機関の金ばかりで、大組織の幾重の稟議を経ないと金がでない。
「それ、おもしろそうやないか、ほなわしが金出すで」というキャピタリストが、日本には乏しい。これは良い悪いの問題ではない事実としてね。
日本や欧州に弱くて、アメリカに強く働いている力は、ひとことでいうとこの破壊&創造の力かもしれない。
この点で、とりわけ日本の大銀行はダメだね。以前長く務めた職場だから良くわかる。
私自身が勤めた東京銀行には、良く言えば自由で個人的な判断が活きる余地があった。私自身その恩恵に浴して、今から振り返ると危ない冒険もやったが、1996年に合併してからは組織が硬直化してしまって、何事も上意下達の大組織になってしまった。2006年にUFJとの合併で、その傾向はますます強くなったようだ。
いつの時代も大きな変革は「周辺部」で起こると考えている。ところが日本ではその周辺部が貧弱なんだな。
追記
読んでいないけど、スタンフォード大学のティナ・シーリングという先生のこの邦訳版もアマゾンで10位前後にはいるベストセラーになっている。
「今2ドルを2時間で増やす方法を考えてください」とかいうケーススタディーで始まるのだそうだ。
「人生でもっとも興味深いことは、あなたが定められた道をはずれ、常識を疑い、リスクをとり、自分で幸運を呼び込んだときに起こります。このことをわたしは彼らに教えてきました。問題というのはたいてい、見方を変えればチャンスなのです。」著者
日本の学校では、こういう見方、発想法、ほとんど教えないよね。
ひとことで言えば「人と違うことを選んでやって、成功しちゃおうぜ」みたいな感覚。
アメリカではそれが謳歌されるのに、日本では「人の裏をかく」みたいな悪いこと感覚で受け止められる。
やはり教育が権威主義的なんだな。
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