11月2-3日のFOMCでFRBは5000億ドル規模の量的金融緩和の追加策(Quantitative Easing 2、略してQE2)をするだろうという観測で市場は走っている。というよりも、バーナンキ議長が既に市場にそうした予想を織り込ませる発言を繰り返しているので、QE2はほとんど確実視されている。規模はまだ分からないが、方法は国債の購入だろう。
目先のデフレと景気低迷リスクを回避するために、QE2は不可避と考えるエコノミストは多数派で、私もそう思うが、副作用も考えておいた方が良い。2008年初までの通常手段(伝統的な手段、つまりFFレートの引き下げ)による急速な金融緩和で何が起こったか? 原油をはじめ国際商品市況のバブル的な高騰が起こり、そして08年9月のリーマンショックを契機に価格は崩落した。
日本の2000年代のQEも世界的な円売りキャリートレードを助長し、世界的な資産価格の高騰や高金利通貨の高騰に「貢献した」とも言われている。実証は難しいが。
これからFRBがやろうとしているのは、基軸通貨米ドルの空前のQE第2段である。それによって生じた過剰な流動性が、新興国や国際商品市況に流入してバブルをうみ出す副作用は当然あり得る。いや、それはもう始まっている。
ブラジルは海外資本の流入による自国通貨相場の上昇圧力を懸念している。中国は、これまで内外の資本移動については厳しく規制してきたが、貿易黒字ばかりか貿易決済のリーズ&ラグズやその他グレーな手段で流入する海外資本による中国元の上昇圧力を莫大なドル買い・元売り介入で押しとどめている結果、国内の流動性過剰が不動産など資産価格のバブルを助長している。
この中国の問題は、中国がドル買い介入を止めて中国元の上昇を受け入れれば解消する問題である。しかしながら、そのことで生じる中国元相場の大幅な上昇は中国の既存輸出産業に打撃を与えることになるので、中国政府にとって短期的に採用できる選択肢ではないようだ。とすると、米国の量的金融緩和パート2の副作用の結果を私達は数年後に中国など新興国でのバブル崩壊として目撃することになるのかもしれない。
とってもそういう気がしてきた。でもまだ数年先かもしれない。グリースパン時代の2001年に始まった大胆な金融緩和が住宅バブルとその崩壊に帰結したのは2006-07年だったしね。
「崖まで数年ある。まだまだ走れるぞ。今降りたら損だぞ」そういうわけで新しいチキンゲームが始まったようだ。私ももうちょっとはゲームに付き合いましょうかね。
追記:
以上の通り、新興市場の株式は長期的には高い成長が望めそうだが、同時に2010年代にバブルに向かう可能性も高いと思う。ではどうしたらよいか?
まず投資手段としては、私は以前も紹介したがETFのMSCI-Emergingが、今日本で利用できる新興国向け株式分散投資の手段としては、手数料コストも含めて投資家にとって最も効率的だと思う。
これに投資して、どれほどのリターンとリスクを見込むべきか?
とりあえず過去のデータを参考にするしかない。
ところが日本での円建て上場は今年の2月からだから長期の過去データがない。
そこで米国でドル建てでできているiSahresのMSCI-Emerging ETFの価格推移を見てみよう(クリックでそのサイトに飛ぶ)。2003年からの価格が見られる。このサイトでS&P500の価格推移も重ねて見ることができる。比べるとこの期間のMSCI-EのリターンはS&P500よりかなり高い。
しかしこれだとドル建てだから、ドル円の為替相場で円建てにしてリスクとリターンを計算してみた。
年率換算標準偏差(1シグマベースのリスク):30.5%
年率投資リターン:11.25%
繰り返すけど、円建ての投資リターンが年率で11.25%ですからね。円高による為替損なんか屁でもない。
日本のおじいちゃん、おばあちゃんらも、グロソブなんかじゃなくて、こういうもの買って持っていたら、老後の資産もたんまり増えただろうに。
まことに世の中は目の前にある宝の山に気がつかない人ばかり。
ただしリターンも高いが、リスクも高いね。1シグマベースのリスクとは、1年間の期間で68%の確率で相場は上下30.5%の範囲に収まる、逆に言うとそのレンジから飛び出す確率が32%あるということ。
まあ、まだ2009年の世界不況から日が浅いから、新興国バブルの本番はまだこれからだと直感的には思う。私はこのMSCI-Eでしばらくチキンゲームにつきあってみようと思う。
投資は皆様の自己責任でね!
追記その2:
ごんぞうさんから、MSCI-Emergingとそれを構成する原資産(各国のインデックスファンド)の価値の間に乖離が発生していることが指摘されました。
サイトを検索してみたら、世の中には株式おたくみたいな方々が沢山いて、その乖離をグラフかしている便利なサイトを発見しました。
これで見ると、MSCI-Emergingの乖離プレミアムは0%~6%程度、一時10%程度まで広がった形になっています(直近は4%程度)。もしかしたらプレミアム方向への乖離の広がり自体が、一種の「ブーム指標」になるかもしれません。つまり、乖離が広がり過ぎたら、それは人気が過熱していることだから売っちゃえということです。
ふ~ん、勉強になりますねえ。
ちなみに海外ETFは私はS&P500物で保有しています。
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