日本では今月封切られた映画「ウォールストリート」をご覧になっただろうか。
 
 1987年の前作「ウォール街」では、主人公のひとりゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が「強欲は美徳だ(Greed is virtue.)」と株主を扇動し、敵対的な企業買収で大儲けする。傲慢、強欲のゲッコーは実に憎々しい。しかし最後はどんでん返しが起こり、インサイダー取引違反で刑務所行きとなった。観客は「悪の栄えは続かず」のエンディングにほっと胸をなで下ろして終わった。
 
今回の続編はゲッコーが長い刑期を終えて出てくるところから始まる。時は米国が住宅バブルの頂点から金融危機に転げ落ちる局面だ。自分の経験を本に書いてベストセラーになったゲッコーは再び大学の講演会でこう言って聴衆をわかす。「昔、私は『強欲は美徳だ』と言ったが、今はこう言おう。『強欲は・・・合法的だ』」 ゲッコーは住宅ローンの証券化によってファイナスされた住宅ブームがバブルだと喝破し、様々な証券化金融商品をこき下ろす。
 
今回の続編映画「ウォールストリート」では、長年の服役ですっかり凋落したゲッコーだったが、娘名義の隠し財産1憶ドルを元手に、金融危機の最中売り叩かれた資産を安値で買いまくり、たちまち11億ドルの富をなし、復活する。ああ、強欲は永遠だ。そして最後にちょっぴりだけ改心もする。
監督はゲッコーを悪役としてではなく、時代の求める不屈のヒーローとして描いたのではないかと思うのは私だけだろうか。
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以上は、近日中に掲載予定での日経ビジネスオンラインの論考の導入と締めで、この映画についてふれた部分です。論考のメインは「住宅バブルの共通法則」です。ご期待乞う。
 
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