1、ストックとフロー
大震災の経済的インパクトを考える時に、ストックの損失と回復、フローの変動、この2つの違いを理解しておく必要がある。とても基本的なことなので、分かっている方には当然のことだが、メディアの報道などをみるとこの2つのことがごっちゃになっているような記事を目にすることがある。
 
本日のビジネスオンラインに掲載された小峰先生の解説が参考になるだろう(以下)。
 
ちなみにストックとフローの概念、私は大学では1年生相手に教えている。きちんと勉強している学生は高校生時代には理解している内容だ。フロの水位(あるいは入っている水の体積=ストック)とそこに流れ込む(あるいは流れ出る)水の量(フロー)の例で説明した後、それでは「GDPとはフローの概念か、それともストックの概念か?」と問うと、昨年はかなりの学生が「ストック」と答え、私は(*_*)・・・という感じになった。
 
2、東電の「計画停電」
「停電する」と報じた後、「しないですむ」「でも、するかもしれない」と二転三転した東電の対応が叩かれた。 わたしは東電の肩を持つつもりはないのだが、私が常々強調している「予報と選択の変化」がもたらすパラドックスの典型的な事例だと思う。
 
つまり、「明日は部分停電します」と報じるとそれに対応して電車や工場の休止など節電が行なわれ、その結果、電力消費は供給力を下回り、予定していた停電はしないですむようになる。そこで「停電は休止します」と報じると「なんだ、じゃあ活動しようか」という選択の変化が起こって消費電力が増加し、「やっぱり停電するかも」という状況になる。
 
最近の経済学での流行り言葉では、これを「動学的不整合」と呼ぶ。
こういう場合のひとつの対処法は、停電する計画をたてて、当日の電力消費・供給バランスとは無関係に実施することだ。そうすると先々までの計画が選択に織り込まれて、通期では安定的な状態に落ち着くだろう。
 
ただし、最初の発表時は緊急だったので、準備や根回しも間に合っていない状況がありありで、東電としても「できれば停電回避しなくちゃ」という焦りがあったのかもしれない。その焦りが二転三転のふらつき対応を招いたのだろうと私は推察している。
 
追記:
内閣府が3月23日の発表した「東北地方太平洋沖地震のマクロ経済的影響の分析」は以下のサイト