遅ればせながら映画GANTZ(パート1)を見た。昨日土曜日からその後半編が封切られている。それはまだ見ていない。http://gantz-movie.com/index.html
このブログの読者でもあるナドレックさんが前半編については、既にブログに書かれている。
マンガが原作だが、私はマンガは読んでいない。そのかわり、TVアニメ版については今年の春休みにDVDで借りて全部見た。けっこうはまった。 昔読んだカミュの小説と同種の不条理な雰囲気に、マンガ仕立てのバカバカしいようなパロディー調がミックスされた味が、おそらくこの奇妙なストーリーの魅力だろう。原作マンガを単行本で読み始めたら、間違いなくはまるだろう。4月-5月はちょいと忙しくて、全巻30冊にはまると危険なので、原作を読むのは夏休みまでお預けにしておこうか。
死んだ人間がコピーの形で復活し、バトルスーツを着て得体のしれない「異星人」との生死を賭けたバトルゲームを強いられる。その理由は全く明かされないまま、バトルだけが繰り返される。「異星人」の容姿やキャラ設定も奇妙というよりも、ふざけたような設定で、本格SFに出てくる「まじめな設定」からはかけなはれている。
映画で仏像群と戦うシーンが上野の国立博物館のロケであることにちょっと驚いた。なにしろ、仏様相手にドンパチやって、最後に仏像も、博物館の建物も、全部ぶっ壊してしまうという展開である。よくロケを許可したもんだ。 ああ、そうか、お寺だったらこんな不信心、不埒な物語には絶対に許可が下りない。博物館という信仰上は中立の組織だから許可されたのだろう。
私の関心を惹いたのは、主人公玄野(二宮和也くん)と加藤(松山ケンイチ)のキャラ設定だ。
人間にはハンター・タイプ(hunter)、ブリーダータイプ(breeder)の2種類がに分かれるとかねてから考えていた。ハンター・タイプは文字通り獲物を狩ることに喜びを感じるタイプで、行動面では運動的で、闘争的だ。同時に獲物を獲得してしまうと急速に関心が低下する飽きっぽさが特徴でもある。
ブリーダー・タイプは、生き物の飼育、保護に強い執着心を抱くタイプで、生き物を殺すのは大嫌いである。反対に、飼育している生き物がハグハグと元気にエサを食べている姿を見るだけで至福感につつまれる。
双方の類型は、人類の長い狩猟採集時代に進化・淘汰されて形成された行動特性だと考えている。自分がどちらの類型に属すかは、次のような想像をすると簡単に分かる。スキューバー・ダイビングで海に潜ったと想像して頂きたい。目の前に大小の魚の群れが泳いでいる。この魚たちを「もりで突いて獲物にしたい」と感じる人はハンター・タイプだ。 「この魚達に餌をやりたい」と感じるのはブリーダー・タイプである。 実は私自身は典型的なブリーダー・タイプである。
GANTZの玄野は典型的なハンター・タイプで、次第に獲物を狩るようなバトルに魅せられて、ハンター・タイプの属性に目覚めていく。反対に、幼い弟を守ることに強い執着心を抱き、異星人ですら殺すことに強い躊躇いを示す加藤は典型的なブリーダー・タイプである。ハンター・タイプの玄野がバトルの目的は関係なく、バトル自体に魅せられていく一方で、加藤は「命を守る」ことに強い執着を示す。「ブリーダー・タイプはバトルをしない」という意味ではない。ブリーダー・タイプは「何かを守る」ために闘う時に最大の力を発揮するタイプなのだ。実際、映画の設定では加藤は弟を虐待する父から弟を守るために父を殺し、少年院に服役した過去を背負っている。
もっともこのようなキャラの読み解きをしたからと言って、この物語の読み解きが深まるというわけじゃない。あくまでもパロディー調で、半分ふざけながら、奇妙奇天烈で、意味も目的も不明のバトルが延々と展開する、それがGANTZの世界である。「それではみなさン、見てくだチイ」
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