本日(5月15日)の日本経済新聞のSunday Nikkei、マネー生活の欄に以前も紹介した田村正之さん(編集委員)の記事が載っている。
そのポイントをひと言で言えば、日本人でもグローバルに分散されたアセット・アロケーションを持っていれば、過去15年間も「失われた15年」ではなかったということだ。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人と企業年金連合会の1995年を起点とした運用成績がグラフになっている。
両機関とも1995年度末を100とした資産が、価格変動と利息・配当などの運用益の合計で140台になっている(2009年度末)。 日本株が長期でも大幅に下がっている過去14年間にプラスの運用実績を上げたのは、ほとんど海外株式への分散投資が大きなプラスとなっているからだ。
投資というと、「どの株が上がりそう?」という議論ばかりやっている人達が多いが、銘柄選定によるリターンの長期的な相違は、リターンの10%程度でしかなく、「90%はアセット・アロケーションで決まる」という調査結果が、例えばバートン・マルキールの「ランダム・ウォーカー」に紹介されている。(マルキール先生は未だに「効率的市場仮説」を基本的に信奉している点が問題だが、この本はやはり読む価値がある。私は大学のゼミのテキストに使っている。)
海外債券への投資もアセットに入っているが、長期では円高の結果、日本の債券に投資したのと同じ低リターンに収れんすることは掲載されている別のグラフが示している(それでも海外債券は多少プラスが期待できるが、大きな為替変動のリスクを負いながら、結局低リスク・低リターンの日本の債券投資と同じでは、割に合わないだろう)。この点で、私の言ったことも記事に引用されている(以下)。
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「外貨建て投資は金利が高いから有利」と単純に思わないことも重要。金利の高い国はインフレ率も高いことが多い。インフレ率が高ければそのお金で買えるモノが減り、価値が下がる。「為替は2つの国の通貨の交換価値なので、長期的には高金利=高インフレ国の通貨は下落するのがセオリー」(龍谷大学の竹中正治教授)だ。
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記事では書かれていない点を、強調しておくと、金利差は長期的な為替相場で相殺されてしまうが、長期的な為替相場のマイナスの変化を大きく上回るリターンを上げることができるのは、海外の株式への分散投資だ。
ところで、上記の年金運用両機関の実績だが、14年間で100→140台という変化は、年率投資リターンにすると2%台半ばに過ぎない。 企業年金も公的年金も給付については確定給付であり、そこで想定されている運用リターンは概ね3%から5%だろう。だから、実は足りない。
やはり景気変動に対して、もっとアグレッシブなアセット・アロケーションの変更か、レバレッジを効かさないと5%~10%の運用リターンは望めない。当然リスクも高くなるけどね。
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以下は田村正之さんの本
「しぶとい分散投資術、世界金融危機でわかった!」田村正之
私の本と一緒によろしく
「資産運用のセオリー、まず投資の魔物を退治しよう」竹中正治
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