先日日経ビジネスオンラインで銀行の国債保有額が急増していることを切り口に書いたが、
本日の日経新聞にやはり銀行の国債保有が急増していることに注目した記事がでた。 記者くん、私の論考に触発された?(^。^)  
 
ただし、銀行の国債保有は当然のことながら金利リスクを計測したうえでやっていることなので、保有国債の平均残存期間はそれほど長くない。紙面に掲載された図表から大雑把に計算すると、3メガ銀行で平均3年弱だろう。
 
注:「長期の債券ほど1%の利回り上昇に対応する債券価格の下落幅は大きくなる」 私のブログをご覧頂いている方々には、こんなことは常識的な知識だと思うが、世間一般ではそうではない。
 
記事では「長期金利が1%上昇した場合に発生する損失を計算すると約2兆円」と書かれている。
しかし私の計算では残存期間2.5年の場合、利回り1%の上昇(0.5%→1.5%)で、発生する損失は3.8兆円になる(計算は残高158兆円4月末ベース、記事では3月末残高ベース)。
 
おそらく長期金利は10年物国債が1%利回り上昇という想定だろうか。中期金利はその場合、長短金利イールドがあるので、1%より小幅な上昇にとどまる。例えば期間2.5年の債券利回りが、0.5%→1.0%という想定だとほぼ2兆円の損失になる。
 
以前これもビジネスオンラインに書いたが、郵貯バンクの国債保有の平均残存期間はもっと長く、金利上昇リスクは大きいだろう。
 
ちなみに158兆円の平均残存期間が2.5年で、同期間の金利が0.5%→3.25%に2.75%上昇すると、評価損はちょうど10兆円になる。  そんな「想定外の巨大津波」が近い将来到来するとは誰も考えていない。私も短期的にはそんな可能性はゼロに近いと思う。  
 
しかしこのまま政府債務が膨張を続けて10年経てば、その時には総額1000兆円になっている国債残高がもたらす金利上昇リスクは、もっと大きくなる。
 
例えば、1000兆円の残高で、平均残存期間5年間、金利上昇2%(1%→3%)の場合、生じる評価損失額は87兆円になる。ちなみに日本の銀行が90年代のバブル崩壊後償却した損失の総額は約100兆円だ(1992-2005年)。
 
ちょうどプレートの移動で、大地震を起こす地殻のひずみが累積していくようなものだ。
 
負債が大きくても、それに見合う資産があり、負債コストの上昇に見合う資産サイドの投資リターンの上昇が生じるなら原理的に問題はない。しかし、政府のバランスシートは既に数100兆円規模の負債超過である。
 
竹中正治HP