atok440さんのご質問
政府のバランスシートは既に数100兆円規模の負債超過だと書かれていますが、日本が海外に貸している資産の部分は加味されているのでしょうか? 国のBSに関してはいろんな方面でのコメントがあり、個人が把握しにくい面があります。教えていただけないでしょうか
 
政府のバランスシートを企業の貸借対照表と同じで原理で作成するべきではないのか?ということが小泉政権時代に提起され、2000年版から作成、公表されている。以下の財務省サイトで過去の分も全部見ることができる。
 
国の財務書類
 
以下の平成22年(2010年3月末時点)の連結BSを見てみよう。
 
連結の対象は以下の通り(本文に記載されている)。
「連結財務書類は、一般会計及び特別会計に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支出を受けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人等(以下「連結対象法人」という。)を連結している」
 
資産負債差額としての負債超過額は357兆円である。前年比43兆円も負債超過が拡大している。
 
資産の部に「有価証券」228兆円とある。この中に外貨準備として保有している約1兆ドル余の外債(大半は米国政府債)が含まれている。外貨準備の見合いに、負債サイドでは短期の政府証券(TB)残高がある。 
 
勘違いされている方が少なくないが、外貨準備は資産・負債両建てであり、純資産ではない。80円で換算すると30兆円近い評価損が生じている。 評価損を見合いにドル建ての高い利子所得を得ているが、その一部は一般予算に納入されてきたため、現在残っているのはネット評価損である。
 
また、「貸付金」189兆円のほとんどは政府系金融諸機関からの融資残高である。
 
バランスシートの下に以下のように注書きされている点に注意。
「国が保有する資産には、公共用財産のように、行政サービスを提供する目的で保有しており、売却して現金化することを基本的に予定していない資産が相当程度含まれている」
 
つまり現金化できる資産だけで計算すると、負債超過はもっと大きくなる。
 
重要なポイントとして、「公的年金預かり金」133兆円は負債サイドに計上され、それを見合いにした運用有価証券残高がほぼ同額資産サイドの「有価証券」に計上されていると理解できる。
 
分かっている方には常識だが、公的年金預かり金は、資産項目ではなく、負債項目である。なぜなら将来の給付義務に充当されるものだからだ。しかし、本当に将来にわたる給付義務総額(負債)と徴収拠出金(資産)を全部計算して、その現在価値を求めると、さらに数100兆円規模の巨額の負債超過が加わる。 それを財政学者が試算した論文もある。
 
それも負債に加えて表示すべきではないか、という議論が2000年代初頭にはあり、試算されたこともあるが、どの国の政府もそんなことはやっていない(どこの政府もそれをやったら負債超過が激増する)ということで、その後はその計算はなされていない。
 
こういうデータも「国債残高膨張問題なし論者」は、増税するために財務省がでっち上げたデータだと思うのだろうか。 それなら、財政学者に作業を依頼してでも、それを示すだけの論拠、証拠を提示していただきたいものだ。
 
竹中正治HP