さてkimさんが知らせてくれた「くりっく365が中国元、韓国ウオン、インドルピーの取り扱いを始める」件です。
以下のくりっく365のサイトをご参照いただきたい。
 
 
「中国元が買えるなら、対ドルで買っておけば、間違いなく儲かるんじゃない?年間数%のテンポだけど中国政府は対ドルでの元の上昇を受け入れているからね」
 
そう考えた方は、危ない。 これは通常の為替相場市場ではなく、non-deliverable forward(以下NDFと記す)市場の相場による売買だからだ。
 
NDFとは以下のウキペディア(英語版)をご覧頂きたい。
 
「小難しくてわからん(@_@)」
こういうことです(以下)。
 
中国政府は(韓国政府もインド政府も)、自国通貨が世界の外為市場で自由に売買されることを嫌い、それを防いでいる。どうやってそれを防ぐか? 海外の銀行を含む非居住者が資金決済用の中国元口座を中国の銀行に保有することを禁止する、あるいは厳しく制限することで、それが防げる。なぜかというと、外為市場で元を売買した海外銀行(非居住者)は相手の銀行と元資金の受け渡し(決済)をする必要がある。
 
世界中どこでも交換性の自由なドルや円、ユーロなどであれば・・・例えば通常ドルを売買したら、その海外銀行は米銀に置いてあるドル口座を使ってドル資金の受け払いを行なう。 ところが元の場合は、海外銀行が資金決済用の元口座を中国の銀行に保有して決済することが許されないので、中国の外では決済を前提とした元の売買ができない。
 
そこで海外では、資金決済を前提とせず、期日に反対売買で損益だけ清算されるNDF取引しかできない。ところがNDF取引は、中国の外為市場からは切り離されているので、中国の外為市場から乖離した相場が形成される。
 
さらに元とドルの例で説明すると、NDFの先物相場はドルと元の金利差を反映した金利裁定相場が成り立たない。なぜなら、金利裁定による先物相場は元とドルの間の資金移動の自由を前提に成り立つのだが、資金移動の自由が規制・禁止されているので成り立たないのだ。
 
ではNDFの市場でどのように先物相場が形成されるかというと、例えば市場参加者の予想と売買需給の結果として、1年先のドル元相場は現在の相場よりも5%元高ということになれば、5%元高の先物相場となる。
 
そこでNDFをベースにしたFXトレードで、中国元を買うとどうなるか? 先物相場が金利裁定原理で形成されれば、今はドル金利より元金利が高いので、スワップスプレッド(ポイント)が受け取りになるが、金利裁定原理は働かないのでそうならない。
 
逆に1年間で5%元高という先物スプレッドから計算されたスワップポイントが適用されるので、元買い持高のキャリーはスワップ・ポイントの支払いとなる。 これを1年間継続すると、5%のスワップスプレッド分だけキャリーコストを払うことになる。
 
従って、例えば$1=6.4元で元を買って、1年間キャリーした時の持値(損益分岐点)は6.08=6.4×(1-0.05)になる。つまり1年後に市場の予想通り5%元高になっていても、あなたの儲けはゼロ、実際には直物とスワップポイントの売買幅だけ損になるだろう。 5%を超えた元高にならなければ、儲からないということだ。元高の変動が5%未満ならその分だけ損となる。
 
またNDFは以上の事情で市場の規模が狭隘で流動性も乏しいので、業者の提示する売買幅は広くなり、相場は値が飛びやすくなる。浅いストップロス注文などは簡単についてしまうかもしれないし、その執行レートもユーザーにとって悪いものになる可能性が高い。
 
以上、お分かり頂いただろうか。市場の世界に確実に儲かる「フリーランチ」はないということだ。
もしあなたが、FXトレードのユーザーであるにもかかわらず、以上の説明でも 「小難しくて良くわからん(@_@)」と思われたら、FXトレードから即刻足を洗いなさい。
 
竹中正治HP
 
追記:
くりっく365の「制度要綱」のスワップ・ポイントの項目には次のような「備考」がついている。
「(外為市場の相場次第では)必ずしもスワップポイントの受取、または支払いが左記の通り(高金利通貨の買いは受取、売りは支払)とならず、受取と支払が逆になることもある」
 
ははは、良くできた制度要綱だね。ちゃんと書いてあるじゃないか。