先日紹介した日経新聞Monday Nikkeiで購買力平価の考え方について特集記事を書いた田村編集委員の新しい記事が日経ウエッブ版に本日掲載されている。
有料の登録をされていない方がどこまで読めるのかわからないが、以下の通り。
 
「いつかは経済自由人」
「長引く円高、歴史が示すドル目安レートは?」(編集委員 田村正之)
 
 
ちなみに、購買力平価で検索していたら次のような「アンチ購買力平価」のサイトを発見した。
なかなか傑作なトンデモ論なので、ここにご紹介しておこう。
 
このサイトかなり包括的な内容になっているにもかかわらず、運営者が不明で、各セッションを執筆している人達も匿名でわからない。
 
おそらく証券会社など投資家の海外投資をビジネスにしたい機関が、匿名執筆陣で書かせているのだろう。
匿名にしているのが、実に姑息(こそく)で、「こうやってデマを世の中にふりまくんだ」という見本のようだ。
 
購買力平価に関する「トンデモ度」はSA級、大学の国際金融論の講義の試験で、これをこのまま掲載して、誤っている点を指摘せよ、なんて問題にするのも良いかもしれない。(ただし絶対的購買力平価の算出が無理であることを指摘している点は、ある程度同意できる。)
 
「海外投資データバンク」
以下引用です。
 
「確かに相対的購買力平価説は、ある程度は理屈の通る法則でしたが、近年では崩れつつあります。2000年代に入り、激しいデフレで通貨価値が上昇しているはずの日本円が、世界のほぼ全ての通貨に対して円安が続いていた現象が、相対的購買力平価説を真っ向から否定しています。
 
これは、低金利の円で資金調達し、高金利国で運用する「円キャリートレード」が原因です。特に2005年以降は、ネットでのFX取引が個人にも広まったことで、円売り=外貨買いの需要が極端に増えたことも、円安を助長しました。FXは数十倍のレバレッジが掛けられるので、例えば100万円しか資金が無い個人投資家でも、数千万円分の円売り・外貨買いを行うことが可能なのです。
 
ところが2008年の金融危機以降、今度は極端な円高になりました。世界各国が自国通貨の切り下げ合戦を激化させていることが原因です。FRBやECBがマネタリーベースを激増させていることは、国債などの資産を直接買い支えるという意味だけでなく、自国通貨が安いほど貿易で大きな利益を稼げる為、意図的に通貨安へ誘導させるという効果もあるからです。
 
そして世界で唯一、マネタリーベースを増やさない日銀のせいで、日本は円高に苦しめられることになっています。日本はGDPが欧米よりもより大きく減少しているのに、強烈な円高が襲っているという事実は、為替の基本とされる「国力に比例する」という理屈を真っ向から否定しています。
 
購買力平価説は、グスタフ・カッセルが1921年に発表した理論ですが、当時は国際的な資本移動はまだ少なく、現在とは経済の前提条件が違いすぎます。カッセルの時代には、円キャリートレードなど想像だに出来なかったことです。
 
天動説が地動説に改められたことと同様に、経済理論も時代の変化と共に訂正されるべきものなはずです。21世紀の世界経済は、為替レートは購買力平価説にも、国力比例説にも合致しない、新たな領域に入り始めたのです。」
 
竹中正治HP