本日(7月20日)に掲載された小峰教授の日経ビジネスオンラインの論考は、経常収支、財政赤字、そして将来起こり得るリスクとしての日本からの資本逃避(キャピタルフライト)の関係をわかり易く解説している。
俗流評論家に扇動、洗脳されて、「日本の財政赤字は問題ない」と主張し、財政再建の主張をみな「財務省の陰謀」と中傷している方々は、頭を冷やしてこの論考を読んで頂きたいものだ。
ただし、国際収支発展段階説は、私はあまり機械的に適用しない方が良いと思う。というのは最終ステージは「対外債権取り崩し国」であるが、そこで一国の経済発展がみな終わりを迎えるわけでもないからだ。また、小峰先生と同じで、今回の震災を契機に日本が一気に経常収支赤字に移行するとも考えていない。
さらに、何度も言うように、今のコースを後10年かそこら辿れば、国内の貯蓄・投資バランスは貯蓄過少になり、政府債務は家計部門の金融資産残高を上回り、債権取り崩し国に移行し、資本逃避に直面するリスクが高まるだろうと言う点で、小峰先生と全く同じ意見だ。
以前日本の対外純資産は約260兆円ほどで、世界最大である。しかし1990年までは日本の財政収支はほぼ世界一健全だった。それからわずか10年で政府債務のGDP比率最大の国になってしまったことを考えれば、安穏としていられまい。
日本について、未成熟な対外債権国から成熟した対外債権国に移行できるのか、この点もこの国の金融・投資文化、リテラシーの現状を考えると楽観的な気分になるのは難しい。最悪のシナリオは未成熟な対外債権国から中抜きで一気に対外債権取り崩し国に移行してしまうことだろう。
それができるかどうかは、日本の投資家の合理的なリスクテイク姿勢の回復にかかっている。
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