貧トレさんのご質問
「ダウは4月の高値を抜けないまま、昨日は-512.76(前日比-4.31%)の大暴落。これってひょっとして弱気相場入りでは?と思えてならないのです。もしアメリカが景気減速を認めたとすると、政策や経済の動きはどうなるでしょうか。今以上のインフレ政策を取るのか。金価格は。そして日本は。」
日本の株も、米国の株も、米国景気次第だと思う。QE3はあるかどうか、わからない。1970年代的なスタグフレーションは賃金が上がらない環境では起こり得ないので、起こらない。
相場相手のトレーディングをしていて一番難しいのが、トレンドの転換の判断で、景気の判断も同様。
上げにしろ、下げにしろ、同じトレンド続いている時は、基本的にlongなりshortなり、同じポジションを維持して、多少の変動は辛抱していればリターンが上がる。
あるいは一定のレンジの中で小さな上下動を繰り返す持ち合い相場なら、小刻みに上がったら売り、下がったら買いをしていれば、そこそこに儲かる。
一番リスクが高くて不確実性が高いのが、相場の転換点の判断。回復してきた相場、景気がここからまた下げ相場に入るのか、持ち直して回復が続くのか? 「ここから先どうなるんでしょう?」という質問をアナリストやストレテジストが一番沢山受けるのも、不確実性が一番高いpossible turning point(転換点かもしれない局面)だ。今週号の雑誌Economistsは"Time for a Double Dip?"で米国の景気後退局面への移行の可能性を50%と書いている。要するに分からないということだ。
しかし「わからない」と」言っちゃあ、ストラテジストは商売にならないので、分かったふりをする。人間、分かったふりをしている時が一番危ない。反対に明らかな不況局面、あるいは明白な好況局面は、判断に悩むことはない。それがいつまで続くかは分からないとしてもね。
だから、私の基本的なスタンスは、明らかな不況局面ではリスク性資産を買う、明らかな好況局面ではそれを売り上がる。そして、分からない時はポジションを広げない、ということにしている。
ところが面白いことに、人はしばしば不確実性の最も高い「もしかしたら転換局面」で相場を張りたがる。なんでだろう? それは相場と常時つき合ってしまう場合の人間の性だろう。戦でいえば、五分五分の難しい局面では戦いを回避すればいいのに、なぜか挑んでしまう。私は基本的に慎重な性格なので、8割以上勝てると思わなければ、大きな投資はしない。
「そう言われても、既に大きなポジション張っているので、ここから先、株は大きく下がるのか、回復するのか、重大なんです」 業者的投資家としての問題意識としてならば、そうなるのだが、おそらくそれは個人投資家としては大き過ぎるポジションを張っているということじゃないかな。
私の運用資産は未だに半分は都心のマンションで、内外の株式は25%程度、負債は2007年に返済して、現在はレバレッジなし。このあたりが自分の本業の妨げにならない程度のリスク量だと思っている。
と、原理原則で語ると以上のようなことになるんだが、それじゃあ面白くもなんとない。財務的に許容できる余力の範囲でなら、多少の冒険も良いだろう。私は「このまま米国が再度の景気後退に向かうことはない」の慎重な楽観論のスタンスで、S&P500で買い下がってみようと思う。追加の投資金額としては、そうねえ、資産の5%未満かな。もし予想に反して景気後退になってしまったら、次の回復局面まで待てばいいわけだしね。
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