米国の8月のFOMCの声明「2013年半ば頃まで今の超低金利(FF rateのほぼゼロ金利)を続ける見込みが高い」が出てから、ドル円相場の見通しを再考してみた。
 
既に前日ブログで2012年末まで70円-90円のレンジと書いたが、円高ドル安が持続しそうな理由、さらに円高・デフレを解消する政策的な手段があるとすると何か、この2点について日経ビジネスオンラインに寄稿した。その論考は明日水曜日に掲載される予定なので、ご関心のある方はご覧頂きたい。
 
本ブログでは、その論考の核になっている「日米の実質短期金利格差とドル円相場の変化の相関関係」について、ちょろ出ししておこう。
 
縦軸はドル円相場の対前年比の変化(%)であり、プラスはドル高への変化を示している。ただし短期的な相場変動は、雑多な要因による振れが大きいので、12カ月移動平均を取ることで変化をならしてある。
 
 グラフ上の点は2003年1月から2011年6月までの各月の分布を示しており、右肩上がりの分布になっている。つまり「実質金利格差プラス=ドル相場上昇(逆は逆)」の相関関係が存在している。実質金利格差と為替相場の変化の相関係数は約0.7、決定係数は0.5024である。これはグラフに示されたドル円相場の変化の50%は実質短期金利格差の変化で説明できることを意味している。
 
 日米の実質金利格差と為替相場の関係は、実は相関性のかなり高い時期と、相関性の低い時期があり、一定ではない。しかし2003年以降現在まではかなり相関性が高い時期に該当する。その原因は、円売りキャリー・トレード持高の累積やその取り崩しが大きな相場要因になっている時期だからかもしれない。
 
 現状(2011年6月)は米ドルの実質金利がマイナス3.34%、円の実質金利がプラス0.46%で、実質金利の格差(=ドル金利-円金利)はマイナス3.8%、ドル相場の変化もマイナス(ドル下落)、つまりグラフの左下の象限にある。左上の象限にはほとんど分布がないので、2003年以降の相場環境では実質金利差がマイナスのままドル相場が対前年比で上昇することは可能性がとても低いことを示唆している。
 
つまり8月のFOMCの声明通りの見通しになれば、ドルのゼロ金利解除が展望できるのは2013年だから、2012年いっぱいはドルはデフレにならない限り、実質マイナス金利が続き、ドル円相場と実質金利の分布はグラフの左下の象限に止まる、つまり円高・ドル安基調が持続する公算が高いということになる。
 
日本サイドとして、そうしたデフレ・円高基調を解消する秘策はあるか? ないわけじゃない。それについては今週水曜日掲載予定の論考をご覧頂きたい。
 
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