どうも欧州PIIGS諸国の政府債務問題は、黄色信号から完全に赤信号に変わってしまった気がする。
つまりもっと深刻な局面がこの先待っているという嫌な感じがつのるばかりだ。欧州の株式などユーロ建て資産は一切持っていないが、世界の株式市場は同調性が高まっているので、先日MSCI-Emergingの保有の3分の1を売ったとコメント欄で書いた通り。
その翌日からドスンと下がったので、まあ、3分の1でも売っといて良かった。もっとも、事態の悪化がクライマックス局面に達したら買い戻すつもりだが、それはまだちょっと先、という感じ。今日のFTにも以下の記事が掲載されており、ここから先は回復するよりも、ワースト局面を見る方が先だろうと予測している。同感せざるを得ない。
欧州不安による世界的な株価の下落は、例えば米国についても投資家のリスク回避→株価の下落→負の資産効果による消費減退→景気の低迷という悪循環を生むだろう。
LatAm lessons show eurozone must prepare for worst
The prospect of a sovereign default in Europe evokes memories of 2008 and
the collapse of Lehman. For me, a better parallel is 10 years earlier. Today’s
drama has all the hallmarks of a classic Latin American crisis, only this time the
Latins are in southern Europe.
The Russian default, itself an echo of the previous year’s Asian Tiger crisis, sent Latin America into a tailspin that took five years to stabilise. Countries many
thousands of miles from Moscow, and with few trade links, were caught up in the crisis, their leaders, such as Argentina’s then president Carlos Menem, at first
either unwilling or unable to comprehend the impact a Russian default might
have on their own creditworthiness. The crisis roamed from one country to the
next, causing havoc in financial markets and led to a range of support measures
from the International Monetary Fund.
悪い状況があく抜けするのはいつか?金融危機に共通する特徴として「返って来そうにない金が返ってこない」と認識されて、損失が償却されるまでは、危機は終息しない。
先日The Economist誌の論考を紹介したが、そこで書かれている通り、①ギリシャの政府債務は返済不能だから、大幅な元本削減を伴う債務リストラが行なわれること、②他国には波及しない、させないと投資家に思わせるだけのユーロ圏の体制が整う(EFSFの大幅増資による国債買い取り体制など)、③不安視されている欧州銀行に十分な資本注入が行なわれる。
おそらく最低この3条件が満たされるまでは、欧州政府債務危機の収束は期待できないし、それまで世界経済は不安定な状態にならざるを得ないだろう。
追記:今日付けの日経新聞が今後の短期・長期の課題をコンパクトにまとめているので、記録のために以下掲載しておこう。
EU、金融安定策3段階で ギリシャ支援、週内詰め
2011/9/27付 日本経済新聞 朝刊
【ブリュッセル=瀬能繁】ギリシャの財政危機とユーロ圏の信用不安に欧州連合(EU)は3段階で対応する構えだ。
最初の関門は週内が焦点のギリシャ向け融資。EUと国際通貨基金(IMF)の調査団は27日にもアテネに入り、財政再建の可能性など協議を再開する。昨年5月に決めた総額1100億ユーロ(約11兆円)の第1次金融支援の一部である80億ユーロの追加融資が懸案だ。
ギリシャ政府は国内の強い抵抗を受けながらも公務員の3万人削減や年金の減額を決めた。10月初めのユーロ圏財務相会合が融資を認めれば、目先の債務不履行(デフォルト)は避けられる。
第2のハードルは総額4400億ユーロの欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充だ。危機を防ぐ策は(1)融資能力を2500億ユーロ程度から4400億ユーロに向上(2)市場で危機国の国債を購入(3)銀行に公的資金を注入――が柱。EFSFには欧州中央銀行(ECB)とともにイタリアやスペインなどの国債購入に期待が膨らむ。ただ実行には原則各国の議会承認が要る。29日にドイツ連邦議会(下院)の採決が控える。(各国の議会の動向、可決いかんで株価は大きく振れることになりそうだね。竹中)
連立与党の一部がギリシャ支援に反対するスロバキアの政治情勢は緊迫。ドイツの可決は確実だが、与党から造反者が相次げばメルケル首相の求心力の低下を映す。
第3の課題は中長期的なユーロ再生策だ。ファンロンパイEU大統領は財政統合と資金調達に道を開く「ユーロ共同債」の構想を巡り「各国の財政収支を均衡させるのが先」とけん制する。だが「国債の格付けがトリプルAの国だけで発行する」(レディング欧州副委員長)案も出ている。
以上
竹中正治HP
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