本日の日本経済新聞、経済教室の論考「国際化、生産性向上の鍵に」(戸堂康之 東京大学教授)
やはり、これが経済政策論としては現代のスタンダードな考えだと思う。以下にポイントを掲載。
 
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農業・被災地にも有益 「内向き」改め、経済活性化
輸出によって企業の生産性や効率性は上昇
世界で戦えるのに国内にとどまる企業多い
日本の農産物は高品質で輸入品に対抗可能
 
「企業が国際化して世界とつながることで、新しい技術や知恵を生み出して成長することを明確に示している。 ところが、日本の輸出額の国内総生産(GDP)比率は経済協力開発機構(OECD)34カ国中、下から2番目(0408年平均)で、日本は必ずしも貿易大国ではない。海外からの直接投資額のGDP比も下から2番目、海外への直接投資は25位だ。日本の国際化の度合いは相当低い。」
 
 「EPAの中でも、米国をはじめ環太平洋9カ国とのEPAである環太平洋経済連携協定(TPP)は日本経済にとって特に重要だ。理由の一つは貿易拡大効果が大きいことだ。内閣府や経済産業省は、TPPによる輸出の拡大でGDPが3兆~10兆円分増加すると試算している。」
 
「一方、TPPに関する懸念も少なくない。例えば、農林水産省はTPPによりGDPが約8兆円減少すると試算した。これは、関税率が10%以上の農作物の生産の大部分が壊滅するとの前提でつくられている。しかし農産物に対する関税撤廃により、国内生産が壊滅するということは考えられない。理由の一つとして、日本の農産物の多くは海外のものより品質が高いことが挙げられる。質の低い輸入米が入ってきても、高品質の国産のブランド米の消費量が激減することは考えにくい。」
 
「幕末の開国により1人あたり実質成長率が1.7%上昇したことや、企業レベルでみれば輸出や直接投資により生産性が平均で2~3%上昇することを考えれば、国際化の進展で経済成長率が0.5%程度上昇することは、必ずしも野心的な予測ではない。もしそうなれば、現状維持の場合に比べて国際化によるGDPの増加額の累計は10年で100兆円を超える。こうした大きな成長効果を期待できるTPPに日本が参加することを、ぜひとも期待したい。」
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現実の政策としては、こうした経済政策原理に国際政治、国内政治の要素を考慮に入れて、「TPP戦略論」に練り上げることが求められるんだが、今の野田内閣にそれができるかどうか。1110日のAPEC会議までに「日本としての大局的な方向性」を示すそうだから、いよいよ野田内閣も本格的に試されることになる。
民主党内部に反対派が180名(?)いるそうだから、簡単にはいかないだろう。
でもそれはどこの国でも同じ。日本の政策的な合理性とリーダシップが問われていると思う。
 
竹中正治HP