文字通りまっとうな不動産投資の指南書だ。文章もわかりやすく、これからマンション投資など個人でやってきようと思う方には必読のノウハウが盛り込まれている。
「愚直でまっとうな不動産投資の本」長谷川高、ソフトバンククリエイティブ、2010年11月
著者は大手デベロッパーに勤務してバブルとその崩壊を経験し、96年に独立して不動産コンサルタントとしてやってきた。私自身、サラリーマン本業のかたわら98年からマンション投資を始めてアマチュアながら資産を拡大してきた。その過程で学んだことが、不動産のプロである著者によって裏付けられているので心強く感じた。
一番共感の強い点は細かいノウハウより投資そのものに対する基本姿勢だ。
「新聞やテレビで100年に一度の世界恐慌なんて言っているなあ。そうするとそろそろ底値が近いかもしれないなあ。そろそろちょっと証券会社と不動産会社に電話でもいれてみるか。そんな程度のスピード感が実は投資にはちょうどいい」(p173)
「みんながこぞって投資する対象が、必ずしも長きにわたって良い投資商品だとは言えない」(p171)
私の「資産運用のセオリー」2008年や「なぜ人は市場に踊らされるのか?」2010年を読んでくださった方は、共通性を感じるだろう。
つまり長期投資に徹したコントラリアン(逆張り戦略)です。
おそらくこの境地、著者も大手デベロッパーで働いてた後に、独立してから極めたのだと思う。
私自身が大手銀行でディーリング業務をやっていた時には、理屈では分かっても実行できなかった境地だからね。
経済学者は「合理性」という仮定が大好きだが、経済主体の合理性を前提に精緻に構築された理論モデルから引き出される結論は現実に対する処方箋として合理的でない場合もある。
実践的合理性、これこそ本当に求められるものだ。私自身それを追究したいと思ってやってきた。
本書は、平易に書かれているが、そうした実践的合理性が盛り込まれていると言えるだろう。
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