掲載した最初の図表は日本の株式指数TOPIXと全産業の経常利益(除く金融機関)の推移だ(+ボタンで拡大してみてください)。2008年のリーマンショックから企業の経常利益は比較的急速に回復したのに、なぜか株価はそれほどに回復せず、2009年後半以降は停滞している。
 
2番目の図表は経常利益の変化率(前年同月比)とTOPIXの変化率(前年同月比)を四半期ベースでとって、散布図にしたものだ。当然、経常利益の増加(減少)→TOPIXの上昇(下落)という因果関係をベースにした相関関係がある。
 
ところが、2009年後半以降の赤い楕円で囲った部分は、過去の相関関係からの乖離が見られる。経常利益が回復したのに、それに見合ってTOPIXが回復していない。ちなみに、2009年後半以降を除いて相関係数を測ると、相関係数(R)が目立って上昇する(3番目の図)。つまり2009年後半以降、株価と経常利益の間の相関関係が崩れてしまっているわけだ。
 
これはなぜだろうか?考えられる理由(解釈)は以下の通り。
 
理由1、経常利益は財務省の法人企業統計からとったものだが、長いデータ系列は金融業を除くものでしか利用できない。法人企業統計が金融機関のデータを含めるようになったのは近年だからだ。ところが金融機関の株価の下落が2009年以降著しい。その結果、金融機関の株式を含むTOPIXと金融機関を含まない経常利益の乖離が大きくなっている面がある。
しかし、それだけではこの相関関係の変化のごく一部しか説明できない。
 
理由2、今期2010年はともかく、投資家の来年に向けた見通しがひどく悲観的なため、足元の利益は回復しても株価が上がらない。株価が織り込む利益とは実現された過去の利益ではなく、見通せる将来の利益だから、そういうことならつじつまは合う。この解釈が正しいなら、日本の株価は来年に世界経済が再度不況に突入し、日本も再度景気後退になることを織り込んでいることになる。
たしかに、ユーロ圏ソブリン危機が一段と深刻化し、中国でも不動産バブルで不況ということになれば、その予想は実現してしまう。
 
しかし、一方で米国の株価指数S&P500は、米国企業の収益回復を反映した程度には回復しており、停滞著しい日本株とは異なる。リスク要因は依然あるものの、米国景気自体には底堅さが戻って来ている。
一方、欧州のソブリン危機は「連続ドラマ化」しており、欧州景気の低迷は持続するだろうが、劇発性のショックは回避されそうな可能性が出てきている。
 
ふ~ん・・・日本株が来年の世界景気不況再突入を織り込んでいるなら、実際にそのシナリオが実現しても下げ幅は相対的に小さいかもしれない。反対に、世界景気の持ち直しが実現した場合には、日本株は割安感からぐんと上昇するかな??? まあ、あまり期待を膨らませずに、「禁欲的期待」という程度にしておこうか。