来年のリスク・ファクターはユーロ圏のソブリン・リスクと中国の不動産バブルの破裂とそのネガティブ・インパクト、これは11月に参加したワシントンでのエコノミスト会合でも、ほぼ一致する見解だった。 12月になって事態の進展はますますそう感じさせる。
以下はFTの記事
Hedge fund alarm bells are ringing over China Dec.19.2011
As the Emerging Sovereign Group, a $1bn hedge fund backed by Julian Robertson and
half owned by Carlyle, one of the world’s biggest private equity groups, told its clients
in a recent note:
“we have a gathering sense that the next act of this rolling global debt crisis may well
play out in the East (China).”
The biggest worry most have of China is not just a manufacturing slowdown,
however,but the popping of a massive credit bubble, finding accurate data
on which is even more difficult.
欧州については以下のFT記事を引用しておこうか。
ECB warns of global contagion risks Dec.19.2011
“Contagion of euro area sovereign debt strains remains the most pressing risk for
financial stability in the euro area, the European Union and even across the globe,”
said the ECB’s latest eurozone financial stability review, released on Monday.
しかしECBの警告は、私には笑止千万に感じられる。大規模な国債買い取りを宣言して実行することで、ソブリン危機に短期的にもっとも有効な手を打てる立場にいるECBが、「それは私達の本来の仕事ではない」と背を向けているからだ。
この点の事情は日経ビジネスオンラインに11月に書いた通りだ。
もちろん、ユーロ圏の財政規律の再構築によってPIIGS諸国が国債の信任を回復することが最終的に不可欠だが、不況下でそれを短期的・急激に実行すれば不況が深刻化するのは明らかだろう。だから短期的にはECBが国債を大規模購入し、投機筋の売りをひっくり返し、時間をかけて長期的に財政再建を進めるするしかない。
ECBによる国債買い上げという短期の処方箋抜きで、財政債券のみで対応するというのは、麻酔無しで手術をするようなものだ。患者は出血と痛みでショック死するかもしれん。すなわち経済不振を理由に国民の不満が高まり、政権は倒壊するだろう。 そして政治的な混迷がますます財政再建を難しくする。
第1次世界大戦も第2次世界大戦も、つきつめて言えば、西欧が当時の国家的な利害対立の調整に失敗した結果だったことを思い出さずにはいられない。
もっともユーロ圏が土壇場で妥協し、劇発性の危機を回避する可能性も残っていると思うが、楽観できないな。
竹中正治HP
追記:12月23日付け日経新聞、カルロス・ゴーンがこう言っている。私もそれが望みえる2012年のベストシナリオだと思う。
「――12年はどんな年になるでしょう。」
「欧州が最大のリスク要因であることは間違いないが、他の地域は意外に明るいのではないか。欧州が世界に悪影響を与えるというよりも、そこだけがマイナスで他から取り残されるというイメージだ。実は今年の世界の新車販売は約7500万台に達し、過去最高を塗り替えそうだ。12年もやはり200万~300万台増えると予測している。日本や米国は一定のカーブで回復し、新興国市場も伸びる。一言でいえば『モデレート・グロース(そこそこの成長)』の年になると思う」
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