さて、のりたまさんの毎月分配型投信に関するご意見を検討してみよう。
 
「毎月分配型の合理性は、天井圏での利確であり、暴落時に自然とキャッシュポジションが高まっていることで、マイナスの複利を防げます。底値で分配金を再投資すれば、かなりの複利がえられます。税金をも無視していいくらいに。これが合理的説明かと。分配金を浪費する前提で考えるから非効率と考えてしまうのです。実際にいまの局面は、インデックスを上回っていますよ。ここからの浮上は、どれだけ投資できるかにかかってはいますが。 」
 
「どんな投資も相場前提をどう捉えるかが重要です。年に数回ある暴落があるから毎月分配型が有利になることがあるのですが、暴落がない相場なら非効率であることにかわりはありません。たまたま、今の情勢に合っていたというべきでしょうか。あと中期で投資は捉えてます。運用スタイルも重要ですね。効率だけで投資は語れません。また日本株式など常に乱高下するようなものはむいていません。投資対象も有利不利に関係しますね。 
 
1、まず原理的に考えてみよう
現在の株式や外貨債券のように下げ相場が中期的に持続している場合は、定期的に生じる配当を再投資に回すよりも、キャッシュとして留保しておいた方が、リターンは高くなる。なぜなら、下げ相場だから再投資すればその部分も評価損を出す一方、現金にしておけばその部分は評価損を生じないからだ。
 
上げ相場が持続する場合は、ちょうどその反対で、配当は源泉税を払わずに再投資した方がリターンは上がるので、毎月分配型のリターンは相対的に悪くなる。
 
のりたまさんが言うような、短期的な上下動の幅が大きい相場環境で、ファンドマネジャーが短期的な上げ局面で(分配金確保のために)一部を利食う行動に成功していると仮定するならば、機械的に配当部分を再投資するよりも、毎月分配型の方のリターンが税金コストを勘案しても相対的に高くなる可能性がある。
 
ただし、本当にファンドマネジャーがそうした短期的な高値圏で売るような投資行動に成功しているかどうかは、個別のファンド毎に実態調査でもしてみないとわからない。直感的には私はちょっと懐疑的だが、検証はできていない。
 
長期的には上げ局面も下げ局面もあるが、名目株価は趨勢的にはマクロの企業収益の増加を反映する程度に上がっていくことを想定するなら(インフレ率がプラスの世界の想定ですね)、やはり配当は税金を払わずに、再投資に回す方がリターンは高くなる。
 
ところが日本株は過去20年間にわたり大局的には下げトレンドという状態、外貨債券投資も2007年以降は円高で円ベースで下げトレンド、そういう下げトレンドの中で「将来も下げだ」という予想が強くなった現在、完全に諦めた投資家は株式も外貨債券も、投信から撤退している。実際、投信残高は解約超過で減少しているからね。
 
一方、諦めきれない投資家は、長期的なキャピタル・ゲインは諦めても、配当によるキャッシュ獲得(見た目のインカム・ゲイン)志向を強めている。その結果、毎月分配型に誘引されている面がある、というように理解することが可能かもしれない。
 
そういう意味では、のりたまさんが、相場の上げでキャピタルゲインが期待できない現在の相場環境を前提に、「たまたま、今の情勢に合っていたというべきでしょうか」とコメントしている点は私も同意できる。
 
ただし長期投資に徹し、投資の合理性も長期をベースに考えるとすると、毎月配当型は市況が総悲観の中での一種の「あだ花」だと思う。 
 
また、毎月配当型を買う投資家の多くが、のりたまさんのように配当キャッシュを溜めて、底値買いのチャンスを狙っているとは思えないな。
 
2、リターンの比較検証ができるか?
次に、毎月分配型と非毎月分配型の実績リターンをモーニングスターのサイトで実際に比較してみようと思ったが、これが困難であることがわかった。以下サイト
 
モーニングスターは最近、毎月分配型のみを抽出検索できるカテゴリーを設定したが、同社の示す過去の実績リターンは配当を全て再投資した前提で計算されているので、配当をキャッシュとして蓄積した場合のリターンがわからない。
 
ただし国内株を対象にした毎月分配型の投信の過去1年間の総合投資リターンは‐20.7%で、国内株式インデックス型(TOPIXや日経225)のリターン-13%~14%よりかなり悪い。
 
もっとも毎月配分型の多くは海外債券投資が対象だ。ところが、海外債券投資については、TOPIXやS&P500などの株式指数のように比較対象できる適当な指標がないので、市場全体よりパフォーマンスが良いのか悪いのか、評価が困難だ。 
う~ん、残念だな。この点、比較参照できる適当な指数がないかどうか、もうちょっと探してみようかなと思う。