本日1月28日(土)の日経新聞「ドルと円の弱さ競争」と題した記事が目にとまった。
 
「今週前半は2011年の日本の貿易収支が赤字になったことを材料に円安が進んだ。「海外の投機筋は、日本の貿易赤字や財政赤字などを材料に円売りを仕掛けようと、手ぐすね引いている」(欧州銀行ディーラー)  決まった期日に決まった価格で通貨を売買できる権利を取引する通貨オプション取引。今後6カ月間で80円や81円で円を売る権利に引き合いが来ているという。これから円が下落することに懸けている海外勢がいるということだ。」
 
「投機筋は相場を不安定化する」という一般的な批判に対して、「それが本当なら、投機筋は相場が高い時はさらに買い、安い時はさらに売り、その結果、損が累積して自滅、絶滅するはずだ。しかしそうではなく、彼らが存続しているのは、安く買って、高く売ることに全体としては成功しているからだ。これは相場を安定化させていることに他ならない」という趣旨の反論をしたのは、マネタリストのミルトン・フリードマンだ。
 
フリードマンの反論は事実を単純化することで都合のよい主張をしている面はあるが、一面の真実でもある。 投機筋の動きがファンダメンタルズから乖離したと思われる相場を押し戻す場合もある(逆もまたあるのだが)。
 
例えば、1995年に1ドル=80円まで行った円高オーバーシュートを逆転させた動きは、当時の大蔵省財務官、榊原氏の巧みな演出にヘッジファンドなどを含む投機筋がのって円売りを始めたからだと私は確信している(状況証拠しかないけどね)。
 
だから日経新聞の記事の書くように、本当に海外の投機筋が円売り仕掛けに出動するなら、現局面ではPPPから円高方向に乖離した円相場をPPPに回帰する力になるだろう。期間の長い通貨オプションで円プット(円売り・ドル買いの権利)を購入するという手法は、ヘッジファンドが好む手法で、90年代後半の円安局面でも盛んに使われた。
 
とにかく1ドル=90円台程度まで戻れば、日本の輸出メーカーの顔色も相当良くなるだろう。もっともドル円でほとんど短期金利差がない状態が今後2014年まで持続しそうな状況では、円売りキャリーが大規模に起こるかどうか? キャリートレードは金利差がないとキャリー益(=金利差の産むスワップポイント)がでないからね。
 
また、ほどほどに良い程度で止まってくれないのが、相場の力学というものだ。 一度円安の動きで味をしめると、続々と追随する動きが出てきて、最終的には行きすぎた円安になるリスクもある。実際、90年代後半の円安は円売りキャリーの流行で、98年に148円というオーバーシュートをするまで反転しなかった。
まあ、それでも今の日本経済にとっては1ドル70円台の円高が2014年まで持続するよりはましだろう。それに円安に行き過ぎたら、1兆ドル余りに累積した外貨準備を売って(利食いになるね)、円買い介入すれば良い。
 
投機筋様、どうぞ円安を仕掛けてくださいまし・・・。お待ちしております。