gonchanからのコメント、質問でETFの配当について調べた。彼の経験ではMSCI-kokusaiのETFを積立方式で買っていたが、「配当が0.1%ぐらいしかつかないのでやめた」ということだった。
ポイントはETFには現物株式への投資で構成されるものと、株価指数先物への投資で構成されるものの2種類があるということだ。私がメリルリンチの口座で保有しているiSharesS&P500などは現物株式への投資で構成されているので、配当がある。また東証上場ETFでも「TOPIX連動型投信(銘柄コード1306)などは現物への投資なので配当がある。
ところが「上場米国株式(1547)(S&P500連動)」、MSCI-kokusai(1680)、MICS-emerging(1681)などは、投資対象が「株式指数先物取引に係る権利」が投資対象なので、配当は原則生じない。例えば以下のサイトで銘柄1547の日興証券の目論見書をご覧頂きたい。
2ページめの中段に次のように書いてある。
「内外の短期公社債などに投資しつつ、株価指数先物取引に係る権利を中心に投資し、円換算したS&P500指数の動きに連動する投資成果を目指して運用します」と書いてある。
つまり先物指数への投資だから配当は出ない。 おそらく多少は別債券にも投資する部分があり、gonchanが受け取った0.1%という僅かな分配金はそれからの利息部分だったのだろう。
「配当がないなんて現物投資より損じゃないの?」
原理的に考えると、そういうことではない。現物の株式からなるポートフォリオと株価指数先物の間には算術的に導かれる乖離が生じる。つまり現物は配当益があるが、同時に金利コストがかかる。反対に先物指数は配当益はないが、金利コストはかからない。
これについては以下の日本証券業協会のサイトの説明が役に立つだろう。
該当部分だけ以下引用する。
「日経平均株価が20,000円、短期金利が2%、配当利回りが0.5%、決済まで90日なら、先物の理論価格は次のようになります。
先物の理論価格=現物価格×{1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの期日/365日)}
20,000円×{1+(0.02-0.005)×(90/365)} =20074円 」
先物の理論価格=現物価格×{1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの期日/365日)}
20,000円×{1+(0.02-0.005)×(90/365)} =20074円 」
短期金利と配当利回りの格差次第で、現物より先物の方が高くなったり、あるいは安くなったりするわけだ。
だから裁定取引が働いて裁定価格が成り立っている限り、株価指数先物に投資しているからと言って配当分損をするわけじゃない。
現在のようにS&P500の配当利回りが2%前後、短期金利が0.5%以下の状態なら、先物価格の方が現物より安くなるので、先物投資のETFはその分だけ現物価格より安く買うことができる。先物決済期日には価格は同一になるので、配当利回りと短期金利差のスプレッドはその時(先期日に持高をロールオーバーする時に実現する)はずだ。
こうした仕組みは、外為で円資金をドルに転換して現物でドル資産に投資した場合に得られるドル円金利差分が、先物のドル買いだとドルの先物ディスカウント分だけ直物より安く買えて、先期日へのロールーバー時に顕現化する(FXトレードでは1営業日毎に顕現化)のと同じだ。従って配当がなくても損はしない。
しかし現物株式と先物指数の価格差の関係は、為替の直物先物の価格乖離幅よりも不安定だと聞いている。だから実際にそうした形で、「先物投資ETFのリターン=配当利回り・金利格差+現物価格変化リターン」となるかどうか、具体的に個別のETF毎に検証してみないとちょっと不安を感じる。
それはともかくとして、上記の目論見書の説明はわかり難い!もっとはっきりと「本ETFは株価先物指数に投資しますので、原則的に配当はございません」とはっきり素人にもわかるように書くべきだろう(・へ・)。
私とgonchanが気がつかなかったくらいだから、株式投資のプロじゃないとわからんぞ!
しかし現金配当を受けることが楽しみになっている個人投資家には、この商品設計は受けないね。あるいは、おじいちゃんやおばあちゃんに配当が出ない理由を以上のように説明しても理解できんだろう。
また配当の生じる海外現物株式に投資すると、海外での課税と日本での課税の2重課税になる可能性がある。従って先物指数投資のETFというのは、この点では2重課税を避けるためには合理的なのかもしれない。
あるいは海外ETFでダイレクトに保有することで2重課税はとりあえず避けられるのかもしれない。私は米国メリルリンチにiSharesのS&P500をもっているが、難点は手数料が高いこと(購入時3%)。税金コストの点は、もうちょっと調べる必要がありそうだね。
やはり「悪魔(あるいは神)は細部に宿る」ですねえ。実務的に細かいことまで調べないと投資というものは安心できないね。
追記(3月30日):
gakuさんのご質問、MSCIの指数は事実上のインカムリターンを含めたものか、価格変化のみか?
MSCIの定義を読むと以下のように書いてあります。
dividends. On any given day, the price return of an index captures the sum of its
constituents’free float-weighted market capitalization returns.
from constituent dividend payments.
つまりMSCIにも価格変化のみと配当込みの総合リターンベースの2種類がある。ちなみに一般的な株価指数は、TOPIXもS&P500も価格変化のみですね。
ではMSCI-KokusaiやMSCI-emergingはどっちなの?
designed to measure the equity market performance of developed markets excluding Japan.
上記の定義を読む限り、MSCI-kokusaiは価格変化のみの指数だと読めますね。
従ってMSCI-kokusaiに連動したETFは(配当利回り-金利>0)の分だけ、indexのリターンを原理的には上回るはずです。ほんとうにそうなっているかは、長期データに基づいて検証が必要でしょう。
この点、そういう理解で良いか?
誰か資産運用会社にご友人がいたら、問い合わせてみてください。
私も本件は「引き続き調査事項」にしておきます。追加でわかったら、またブログに書きます。
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