「タックスヘイブンの闇」(Treasure Island, Tax Havens and the Men Who stole the World)(朝日新聞出版2012年2月)を読んだ。(↑本のタイトル・クリックでアマゾンに飛びます。例によってアマゾンにレビュー書いています。レビューご覧になった方、よろしければ「参考になった」クリックお願い致します。)
著者はニコラス・シャクソンというFTのジャーナリスト。
犯罪マネー、汚職マネー、脱税マネー、節税マネーなど黒からグレーまでのありとあらゆるマネーがタックスヘイブンの守秘義務を隠れ蓑に流れ込んでいることを語っている。守秘義務というよりは、タックスヘイブンは設立法人の情報をほとんど求めないことにより、ダークサイドのマネーにとって「そもそも情報がないことによる究極の守秘法域」を提供しているという。
先進国や国際機関からの途上国への援助資金も、ざるで水を汲むようなもので、必要な活動に投じられるのは一部に過ぎず、残りは腐敗官僚、政治家に着服されて国外に流出し、そのルートにタックスヘイブンがなっている。
ロンドンやウォールストリートの金融業界は、規制が極めて緩く、金融資本にとってやりたい放題のタックス・ヘイブンのネットワークを隠れ蓑に使って、ブラックマネー、グレーマネーの流れに手を貸し、自らもそこに各種のペーパーカンパニー(SPAなど)を作り、やりたい放題やってると批判する。
中央銀行(Bank of Englandが特に批判されている)や先進国の金融監督当局も、この国際金融のダームサイドに対して目をつぶったり、あるいは「ロンドンの国際金融ビジネスでの優位を維持するため」に積極的に関与知らしてきたと言う。
タックスヘイブンは独立国、あるいは自治領であったりして、外国政府や金融監督当局は直接関与できないというのは、実は虚構で、金融資本は国内の政治家と結託して背後で影響力を行使し、タックスヘイブンを使い勝手が良いように支配しているとも語っている。
米国ではデラウエア州が事実上の「国内タックスヘイブン」になっているとして1章があてられている。
金融に関する著者の見解には、いくつか的外れな個所もあるが、莫大な取材と文献調査を積み重ねていることは読めばわかる。 著者は思想的には左派であるが、現在の国際マネーフローのダークサイドを指摘する内容は一読に値する。私も本書を読んで、金融ビジネスの透明化のためにタックスヘイブンに対する国際ルールの強化が必要だと感じた。
竹中正治HP
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