Incognito, The Secret Lives of the Brain 「意識は傍観者である」デイビッド・イーグルマン著、早川書房
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日本語のタイトル「意識は傍観者である」は、あまり適切ではない。読めばわかるが、人間の意識は自分自身を本当に理解しているわけではないが、傍観者以上の役割も果たしているからだ。
著者は大学で認知行動学研修室を主宰する神経科学者だ。原題のIncognitoはイタリア語で「匿名者」あるいは「匿名の」の意味。私が編集者なら「私の中の他人」とかの日本語タイトルにするだろう。
要するに私達の意識は多くの場合は自分自身の本当の動機を理解しているわけではなく、それは無意識のプロセスの結果であり、自分の中に正体不明の他人(匿名者)が存在しているようなものだという意味だ。
一番興味深かったのは第5章「脳はライバルからなるチーム」だ。脳は無数のサブルーチン(サブエージェント)が行動という出力チャンネルを求めて競争し合う議会のようなものだと例えられる。したがってある意味では葛藤こそが人間の脳の本質だということになる。
ただし大きく分けると(2大政党制のように)理性的意識的ネットワーク(認知的、体系的、明示的、分析的、内省的)と感情的ネットワーク(自動的、潜在的、発見的、直感的、全体的、反作用的、衝動的)に分かれ、葛藤、競合する。
現代社会では前者の方が評価される優位があるように思えるが、おそらく前者だけでは行動の決断力に欠ける結果になるのではなかろうか。合理的な判断も感情的な衝動をばねにしないとできない・・・そういうあざなえる縄のような関係にあるのではないかと思う(これは著者が明示的に語っていることではない)。
そうした脳の構造の中で意識にはどういう機能があるのか?仮説として意識はこうした葛藤し合う無数の無意識下のサブシステムを制御、そして制御を分配するために存在する。要するに意識は大会社のCEOのようなものだ。
意識は新しい環境で新しい行動パターンを組織しなければならない時に出番となり、機能する。環境への行動パターンの適応が進むにつれて、行動は自動化が進み、意識は直接関与しなくなる。これは私達が、運動でも知的な学習でも必ず繰り返すことだ。この無数のサブシステムを必要に応じて再編成する知的柔軟性こそが意識の役割であり、それがもたらす環境適応上の優位性こそが人類史において意識が進化してきた理由だと考えられる。
ふ~ん、なるほど。しかし同じ人類でも意識の機能度、つまりそれがもたらす知的柔軟性の個人差は大きいようだね。自分が慣れた環境の中で、周囲の人達と同じことだけを繰り返して済ませたいという生活をしている方々も多いからね。
要するに私達の意識は多くの場合は自分自身の本当の動機を理解しているわけではなく、それは無意識のプロセスの結果であり、自分の中に正体不明の他人(匿名者)が存在しているようなものだという意味だ。
一番興味深かったのは第5章「脳はライバルからなるチーム」だ。脳は無数のサブルーチン(サブエージェント)が行動という出力チャンネルを求めて競争し合う議会のようなものだと例えられる。したがってある意味では葛藤こそが人間の脳の本質だということになる。
ただし大きく分けると(2大政党制のように)理性的意識的ネットワーク(認知的、体系的、明示的、分析的、内省的)と感情的ネットワーク(自動的、潜在的、発見的、直感的、全体的、反作用的、衝動的)に分かれ、葛藤、競合する。
現代社会では前者の方が評価される優位があるように思えるが、おそらく前者だけでは行動の決断力に欠ける結果になるのではなかろうか。合理的な判断も感情的な衝動をばねにしないとできない・・・そういうあざなえる縄のような関係にあるのではないかと思う(これは著者が明示的に語っていることではない)。
そうした脳の構造の中で意識にはどういう機能があるのか?仮説として意識はこうした葛藤し合う無数の無意識下のサブシステムを制御、そして制御を分配するために存在する。要するに意識は大会社のCEOのようなものだ。
意識は新しい環境で新しい行動パターンを組織しなければならない時に出番となり、機能する。環境への行動パターンの適応が進むにつれて、行動は自動化が進み、意識は直接関与しなくなる。これは私達が、運動でも知的な学習でも必ず繰り返すことだ。この無数のサブシステムを必要に応じて再編成する知的柔軟性こそが意識の役割であり、それがもたらす環境適応上の優位性こそが人類史において意識が進化してきた理由だと考えられる。
ふ~ん、なるほど。しかし同じ人類でも意識の機能度、つまりそれがもたらす知的柔軟性の個人差は大きいようだね。自分が慣れた環境の中で、周囲の人達と同じことだけを繰り返して済ませたいという生活をしている方々も多いからね。
竹中正治HP
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