本日の日経新聞、経済教室に掲載された鈴木亘教授(学習院大学)の論考は、現在の世代間賦課方式による公的年金制度は、世代間格差を拡大するばかりで、このままでは持続不可能であり、積立方式への超長期的な移行を主張するものだ。
やはりこうした事実には目をそむけずに向き合っておこう。
 
引用:
「年金財政はもはや崖っぷちの状態にある。厚生年金と国民年金を合計した積立金の推移をみると、5年前の2006年度末に165.6兆円あった積立金は、11年度末には125.7兆円まで取り崩されている(図参照)。もし今のペースで積立金の取り崩しが続けば、28年ごろには枯渇する。
 
筆者の推計では、厚生・共済・国民年金を合わせた公的年金全体で750兆円の「債務超過」に陥っている。この莫大な債務を、今の若者世代やこれから生まれる将来世代に強制的に背負わせている「世代間格差」こそが、現在の年金問題の本質だ。
それでは、どのような抜本改革が必要か。筆者は「年金清算事業団創設による積み立て方式移行」こそが真の問題解決方法だと考える。積み立て方式とは、若いころに納付した保険料を積み立て、老後にそれを取り崩して年金を受け取る方式だ。」
 
しかし、世代間賦課方式から積立方式への移行は、移行期に莫大な負債が生じる。なぜならば、移行によってすでに「もらい得」している高齢者の給付原資が宙に浮いてしまうからだ。そこで鈴木教授は次のような対策を提案している。竹中
 
消費税引き上げ(物価スライドの反映なし)や年金課税強化をすれば、高齢者世代に負担を求められる。さらに彼ら(高齢者)が亡くなってから、その相続資産に一律課税する「年金目的の新型相続税」を創設してはどうか。高齢者世代は、若者世代が負担をしていることで、過去に支払った保険料をはるかに上回る年金を受け取り、相続資産を残せるわけだから、若者世代のために相続資産の一部を返却するという考え方は合理的だ。
それでも不足する債務処理の財源として、遠い将来の世代まで薄く広く負担する「年金目的の追加所得税」を創設する。国が設立した年金清算事業団は倒産することはないから、100年でも150年でも債務を背負い続け、将来世代にわたり少しずつ債務を返却する計画が立てられる。」
 
http://www.nikkei.com/content/pic/20120719/96959996889DE6E1EAE4EBE1E6E2E3EAE2E5E0E2E3E09997EAE2E2E2-DSKDZO4386939018072012KE8000-PN1-4.jpg
 
相続税を引き上げるのは、ひとつのオプションだが、中小企業経営者などの相続資産は経営する会社への出資金、株式だから、高い相続税率は事業継承を困難にする問題を生む。その点をどのように対応するか問われる。
 
また相続税を高くすると、「それなら相続せずに生きている間に使っちゃおう」ということで、シニア消費が増えるかもしれないね。まあ、それは有効需要の増加ということで良いだろう。
 
いずれにせよ、ひとつの税項目だけで不足を補うのは不可能だろう。給付の削減、消費税を含む各種増税は不可避だと思う。
 
 
竹中正治HP
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