今日の日経ビジネスオンラインの記事に目がとまった。
 
引用:「今、朴正薫・副局長の記事と前後して韓国メディアは「日本病に罹った」という趣旨の記事を一斉に載せ始めた。不動産価格が依然として下げ続けるうえ、株まで大きく下げる。さらには経済成長率の急速な鈍化など、状況が「バブル崩壊後の日本」と似てきたからだ。」
「中央日報の社説(10月27日付)は説く。「過去3回の低成長は一時的な、外からの衝撃によるものだった。しかし、今度は(外からの)特別な危機ではない。構造的な低成長時代に入ったのではと疑わせる」」
 
人口動態の観点からみると、インドを除くアジア諸国の経済成長率は今がピークで、今後趨勢的に下がる可能性が高い。これはエコノミストにとっては常識だろう。
 
日本でこの問題を一般向けに語った最近の本は小峰隆夫教授の「老いるアジア」(2007年、日本経済新聞社)だ。
 
従属人口(14歳以下と65歳以上の人口)の労働人口(15歳~64歳)に対する比率を従属人口比率という。
他の条件が同じならば、従属人口比率の低下は経済成長を押し上げる(人口ボーナス)、逆に従属人口比率の上昇は経済成長を押し下げる(人口オーナス)。
 
この人口動態上の転換点を日本は90年代初頭に越えた。それは成長率の長期的な下方屈折を意味するのだが、なぜか同時にバブル崩壊が起きた。
 
米国はこの転換点を2007-08年に越えた。当然その後の成長率は下方屈折する。ただし以下のグラフで分かる通り、変化の度合いは日本より緩やかだ。若い移民労働力の流入などが高齢化の速度を緩めているからだ。またなぜか同時にバブル崩壊が起こった。
 
韓国はこの転換点を2010年前後に越えた。そしてやはり上記の記事の通り、趨勢的な低成長へのシフトとバブル崩壊現象が語られている。
 
中国がこの転換点を迎えるのは2015年前後だ。韓国も中国も、この人口動態的な変化速度は日本と同じか、あるいはそれ以上に急であることに注意しておこう。
 
またインドだけは例外で、転換点は2040年頃とまだ先だ。
 
人口の変化は極めてゆっくりなので、人口動態予測は20年~30年のタイムスパンでは高い精度で当たることも言い添えておこう。
 
転換点を迎えると、長期的趨勢的な成長率が下方シフトするのは、極めて論理的な結果であり、わかる。しかし、バブルとその崩壊現象が転換点付近で起こることに、なんらかの必然性があるのかどうかは、よくわからない。
 
日本同様に既に転換点を超えている西欧諸国について見てみたが、サンプル数が少なくて、バブル現象との相関性は明確ではない。
 
しかし、日本、アメリカ、そして今韓国と似た現象が続いていることは、想像力をかきたてるね。
果たして中国はどうなるかな????
 
以上は、先週私が参加してきた米国ワシントンDCでの私のプレゼン内容の一部でもある。
「興味深い」とご評価を頂いた。 
 
追記:人口動態の転換点を迎えることで中国の経済成長率はどの程度低下するか?
この点、先週参加したワシントンDCでのエコノミスト会合で、私の親しい中国担当のエコノミスト(中国系アメリカ人)は、今後の中国の長期的な実質GDP成長率(目先10年~20年)を6.5%と予想していた。
まあ、統計データの信頼性が乏しいので、数字自体を議論しても意味がないかもしれない。
以下は参考になる論考。
 
竹中正治HP
http://masaharu-takenaka.jp/index.html (←ホームページ、リニューワルしました(^^)v)
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