毎月恒例となったロイター社への寄稿です。
よろしければ「おすすめ」をクリック、お願い致します。以下一部引用。
引用:「米国の10年物国債の利回りが1.6―1.8%程度と歴史的な低位水準にある。このことを米国経済の「日本化(長期低成長化)」の兆候と感じている方もいるようだが、とんでもない勘違いだ。
最大の違いは、インフレ率の相違が生み出す実質金利の違いだ。・・・・
今の長期債券市場は最後まで走り続ければ(=保有し続ければ)、崖から転落するチキンレースの局面に入ったのだ。金融機関の債券ディーラーがレースから抜けるのが早過ぎれば、その後の利鞘を失う。最後まで走り続ければ、崖から転落する(=債券価格の急落で損失する)。典型的なバブル局面がすでに始まっている。
米国の債券バブルが崩壊する時に、もし日本で安倍政権の下でデフレからインフレへの転換が起こっていれば、日本の国債価格の急落も重なる可能性が高い。インフレ率1―2%の下で利回り1%を割り込んだ長期国債を日本の投資家が保有し続けるはずはないからだ。」
追記:本日12月23日の日経新聞が1987年の債券急落「タテホショック」について書いているので、記録のために一部引用しておこうか。
引用:(32)債券バブル崩壊(1987年) タテホの教訓 小さな暴走 市場震わす
2012/12/23付 日本経済新聞 朝刊
「市場の記憶に深く刻まれた急落がある。株式市場では1987年10月に世界同時に株安が進んだブラックマンデー(暗黒の月曜日)。債券市場ならば同年9月のタテホ・ショックだ。
突然の損失発表
1000億円規模の債券の財テクに失敗、200億円の損失発生で債務超過に――。売上高60億円弱の企業が突然、こんな会見をすれば、市場がパニックに陥るのは当然だ。財テクの舞台となった債券市場で投げ売りが膨らみ、先物中心限月12月物が1日で1円71銭安と急落した。
「ちょっと様子がおかしい」。野村証券の取締役公社債部長だった斉藤惇(現東京証券取引所グループ社長)は、タテホの発表を受けた売り注文を前に、従来の下げと異なる感じを抱いた。実際、相場の下落は東京からロンドン、ニューヨークへと連鎖していく。財テクの全盛だったこともあり「第二のタテホ」を探す市場は、疑心暗鬼に陥っていた。
その頃、タテホ本社も経験したことのない騒々しさに包まれた。報道各社のヘリコプター、相場下落に怒る投資家、見物人。「これは自分が勤めてきたのと同じ会社か」。タテホの研究開発部長だった湊哲則(62)は、人だかりを前に言葉を失った。
研究畑の湊は、自社の財務担当役員の暴走を知らなかった。会社の余資がつぎ込まれていた債券先物の取引は、日本ではまだ2年足らずの歴史しかなかった。企業財テクの手段として一般的になりつつあった株式に比べ、社内の注目を集めにくかった。
そうしたタテホの運用の失敗が債券急落のきっかけになったと記憶する市場関係者が、今は多い。だが、国債指標銘柄だった89回債の利回りは87年初めから低下して2%台をつけた後、5月に反転。10月までには6%台に乗せた。9月初めのタテホ・ショックは債券相場の急落(金利の急上昇)を加速させたが、その最初の原因ではなかった。
それでは、なぜ5月から債券相場が崩れたのか。
当時の債券取引は、一握りの金融機関が短期間に激しく売買を繰り返すディーリングが主流。銀行が証券会社に挑むように売買をしかけ、国債の取引が過熱する様子は「狂乱」とも評された。
そんな日本の債券相場が、海外勢には持続不可能なバブルと映っていた。
海外からの警告
「You should sell」(売りなさい)。87年4月、JPモルガンで債券を売買していた藤巻健史(現フジマキ・ジャパン代表)は米本社の命令に渋々、従った。直後から金利は上昇したのだから、外国人は債券バブルの崩壊を的確に見通していたことになる。
国債の購入から受け渡しまでの決済期間を短くする構想が急浮上したことも、売り材料になった。決済が短縮されれば、自由にディーリングを続ける期間も短くなるとの懸念が強まったからだ。
地方のタテホに外国人の動向や決済短縮といった、細かな事情は伝わらなかった。取引を控えるよう指示する指南役もいなかった。結果として同社は債券バブルの崩壊を早める役割を果たした。
この時代の債券取引を経験した人たちは、若い世代に「タテホ・ショックを忘れるな」と説く。何かのはずみで売りが加速すれば金利は短期間に2%から6%に急上昇する。そんな極端な動きをすることが債券にはある、と。」
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2013年7月20日追記:かくして債券チキンレース第1ラウンドは終了
以下は7月18日(2013年)のロイター記事です。
引用:「ロイターが大手債券ファンドマネージャーの一部に取材したところでは、FRBの姿勢を読み誤ったことや、想定外だった債券売りのスピード、またあるケースでは何年も相場上昇が続いて自信過剰に陥っていたことが、すさまじいしっぺ返しをもたらし、米10年国債利回りは5月初めの1.63%から7月8日には2.75%まで跳ね上がった。
マネジャーの中には、長らく続いてきた相場上昇の最終局面までリターンを搾り取ろうとして同じ投資を引っ張りすぎた向きがあった。」
(←ホームページ、リニューワルしました(^^)v)
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