さて、前回書き残した国債のリスクプレミアムをどのように測るかについて手短にコメントしておこう。
通常、国債が無リスク資産と判断される場合には、他のリスク性資産(たとえば社債)のリスクプレミアムは同じ期間の国債利回りと比較して、その差がリスクプレミアムと言われる。
ユーロ圏の金融ソブリン危機では、ドイツ国債とPIIGS諸国の国債利回りが比較されて、イタリア債のリスクプレミアムが**%とか言われた。
では自国通貨建て国債自体にリスクプレミアムが生じているかもしれないことは、どうやって判断できるか?前回はソブリンCDS市場を紹介したが、述べたとおりソブリンCDSと国債市場には裁定取引が機能していないようなので、ソブリンCDS市場のプレミアム自体を国債市場におけるリスクプレミアムと呼ぶのは無理がある。
実はこの点は前回紹介した2012年度の経済白書が1節割いて解説してくれている。
「3-1国債利回りとリスクプレミアム」
引用:「国債利回りは、①短期金利の将来予測部分と②リスクプレミアム部分から構成される。
前者において、政策金利を短期金利とすると、将来の政策金利の期待値は、先行きの経済環境(将来のインフレ率や需給ギャップ等)についての期待により決定される。
他方、後者のリスクプレミアムは、デフォルトリスクを映じた財政リスク(信用リスク)プレミアムや、取引を行いたいタイミングで実際に執行することが可能かなどの流動性リスクプレミアム等により構成される。
将来の政策金利の期待値を示す金融市場の取引レートとしては、OIS(Overnight Index
将来の政策金利の期待値を示す金融市場の取引レートとしては、OIS(Overnight Index
Swap)レートが挙げられる。OISレートは、将来の金利(O/Nレート)の期間平均値であることから、
財政リスクは含まれていない」
OISについてご不祥の方は、以下のサイトの解説をご参照頂きたい。
補足すると金利の期間による違い(期間構造)は次のように決まる。
期間10年の固定金利から生じる金利コスト=短期金利で期間10年間借り換えを繰り返した場合の予想金利コスト
双方の金利のキャッシュフローを現在価値に引きなおして等価になるように変動金利と固定金利のスワップ取引が成り立つ。
金融機関相互間のオーバーナイトのコール取引は、通常の場合、信用リスクは限りなくゼロに近いので、オーバーナイトの変動金利のキャッシュフローには信用リスクが含まれてないと考えて良いだろう。
従って、このOISレート<国債利回りの部分が、当該国債の信用リスク+流動性コスト=リスクプレミアムと判断できる。
上記白書は、2012年1月時点の市場として、期間10年物では日本国債利回りはOISレートを0.4%程度上回っており、それがリスクプレミアムと判断できることを示している。ちなみに同時期の米国債ではこの幅は0.2%程度、フランス国債では1%余りとなっている。
以上の通り、OISレートとの乖離幅という点では、日本国債でも事実上リスクプレミアムは発生していたことになる。
(←ホームページ、リニューワルしました(^^)v)
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