米国株の続騰、嬉しい限りだが、上がれば上がったで「反落のリスクは?」と心配になるのでが、人の常。
まずShiller's PERを見ておこう(以下サイトと画像)。
 
これはかの有名なロバート・シラー教授の考案したもので、S&P500を対象にしているが、通常のPERと違って、純利益は過去10年間の純利益をインフレ調整して実質化したものだ。
 
通常のPERは分母におく純利益自体が景気変動でかなり揺れ動くので、長期趨勢的な水準を判断するのに適さない。過去10年の実質純利益なら変化も安定しているので、趨勢的な水準になり、それとの比較で割高や割安に振れる株価の度合いを判断できるだろうということだ。通常ベースのS&P500のPERも隣のページに掲載されているので比較してみていただきたい。
 
たしかにこのPERを見ると1929年の大暴落や2000年春にピークをつけて暴落したITバブルの前には、PERが著しく高騰しており、見事に「バブルのサイン」になっている。
 
Shiller's PERでどの水準を超えたら「バブルのサイン」か?
シラー先生は20倍超えたら危ないと考えていたようだ。そう判断して1992年、このPERが20倍を超えた時に「米国株はもうバブルだ!」と警鐘を鳴らしてしまった。 ところがそこから8年間株価は上がり続けた(^_^;)  大空振りとなったわけだ。この点はマルキール先生が「ランダムウォーカー」でちょっと皮肉を込めて指摘している。
 
ところが2000年に出版した「根拠なき熱狂」は、ITバブルの崩壊とちょうど重なり、世界的なベストセラー
となり、シラー先生は「バブル警鐘の神様」になってしまったが、神様も大空振りするってことだね。
 
大空振りになった理由は、ひとつは90年代末のドットコム・バブルの根拠なき熱狂の度合いがすさまじかったことだが、もうひとつは90年代の米国企業の純利益の伸びが80年代よりずっと高くなったことだ。過去10年の実質純利益と比較するというのは、趨勢的で安定しているがゆえに、趨勢的な水準自体がシフトする場合には遅行性が弱点となる。
 
ただ今のShiller's PER、24.63となり、25の壁に迫ってきた。25以上という水準は、1920年代後半のバブル、1990年代末~2000年のITバブル、そして2000年代半ばのリーマンショックまでの時期、この3回しかない。
 
したがって、「これはもうバブルのサイン!」と思うこともできる。しかし90年代初頭にシラー先生がはまったのと同じように、米国の企業収益の趨勢的な水準自体が増加シフトしつつあるのだと想定すると、株価はまだ割高ではなく、今売れば「早過ぎたお利食い」となるかもしれない。
 
さて、どちらに賭けますか。もうバブルのサイン?まだまだ? 
これだから経済も相場も興味が尽きないですねえ(^_^;)
 
それから102円になったドル円の実質相場指数もグラフ添付しておきます。 
 
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
追記:5月17日
そんなに早くQEシリーズの終了に向けて動き出せるかなあ・・・とは感じるが、注意しておこうか。
 
FED: SF Fed President Williams (dove, votes on FOMC in '15) talks about dialing back
$85b/mo QE in remarks very similar to those he made Apr 3. He repeats, "assuming
my economic forecast holds true and various labor market indicators continue to
register appreciable improvement in coming months, we could reduce somewhat the
pace of our securities purchases, perhaps as early as this summer. Then, if all
goes as hoped, we could end the purchase program sometime late this year."
 
追記:本日5月22日の日経新聞にロバート・シラー教授のコメントが掲載されていたので、以下記録しておこう。
――足元で米株価は上昇を続けている。
「主要企業の株価は、過去10年の1株あたりの平均利益に対し足元で約24倍。過去の平均の15倍に比べると株価はやや割高ともいえるが、ITバブル時の40倍強や金融危機前の20台後半に比べればまだ低い。低金利のなか一定額を投資するのはまだ理にかなう」
「企業の利益の伸びの一因は、金融危機後のコスト削減だ。だが過度のコスト削減は長い目でみて成長を妨げかねない。利益の改善が続かず株価も下げる危険がある」
 
 
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