以下の内容、私の著作ご覧の方はご承知のことですが、ご存じない方が多いので・・・Yahooニュース(個人)にも同じ寄稿しています。添付画像はクリックすると拡大されて鮮明になります。
米国の住宅価格
先日発表された3月時点の米国の住宅価格指数(S&P/Case-Shiller Index、10都市部)は前年同月比で10.4%の上昇となり、住宅市場の楽観的な状態を裏付けるものとなった。「すでに再バブルか?」 そう思うのは「あつもに懲りてなますを吹く」ようなものだろう。現状のマクロ的な価格水準は、割高でも割安でもない中立的な水準だ。
住宅価格の割高・割安は賃料との比較で判断できる。図表左は上記住宅価格指数(赤線)と都市部住宅賃料指数(緑線)を示したものだ。緑色の賃料指数が非常に安定的な右肩上がりのほぼ直線に近い上昇をたどっている一方で、住宅価格指数は大きく上下に蛇行していることがわかるだろう。
賃料に比較して住宅価格が大きく割高方向に動いたのが、80年代末の不動産ブーム期と2000年代の住宅バブル期(ピークは2006年)だ。賃料は1987年以来平均3%程度で安定的に上昇している。これはこの期間の消費者物価指数の平均的な上昇率に近い。
賃料はバブルやその崩壊にもかかわらず安定しているのだから、これをアンカーにすれば住宅価格の割高・割安が判断できる。バブルやその崩壊に惑わされないで、買い時、売り時を見抜けるのだ。そこで、筆者は住宅価格指数を賃料指数で割ったものをPRR(Price Rent Ratio)と呼んで、長年継続的にウォッチしている。これは図中に青い線で示してある。青い水平な点線は1987年以来のPRRの平均値である。
住宅価格指数/賃料指数=PRR
PRRの推移をみると、90年代半ば頃はPRRが下がり、住宅の割安局面(買い時)だったこと、また2006年をピークとする住宅価格の上昇がいかにバブル的な割高局面だったかが、はっきりわかるだろう。また、現在のPRRは長期的な平均値とほぼ同じ水準にあり、割高でも割安でもない中立的な水準だと言える。
ただし上記のグラフが示すのはマクロ的な状況であり、当然のことながら、住宅価格は地域的にも個別物件的にもバラツキがあるので、個別物件の割高・割安はやはり個別に期待賃料との比較で判断する必要がある。
日本のマンション価格
右のグラフは東京都区部の中古マンションに関する同様の価格と賃料のデータ(IPD・リクルート住宅価格)をグラフにしたものだ。やはりPRRで見ると、1990年代末から2000年代前半が割安・絶好の買い時であり、2006年から07年にミニバブルが起こっていることがわかる。
アベノミクスでREITは既に過去6か月で既に高騰とミニ反落のワンラウンドを終了した感があるが、現物不動産としてのマンション価格は昨年の底値からようやく1%程度微弱に上がった程度に過ぎない。現在のPRRはやはり91年以来の平均値とほぼ同じ水準であり、割安でも割高でもない中立的な水準だ(リーマンショック後の不況で買い時は2009年だった)。
今後、日本の景気回復が持続し、デフレ脱却、マイルドインフレへの転換が見えてくれば、賃料の上昇→中古マンション価格の上昇という変化が起こるだろう。実際、売り手は次第に強気になってきているようだ。中古マンション購入に成功した個人投資家にとっては楽しみな局面が期待できるだろう。
以上と関連した内容と個人投資家がマンション投資で成功するための鉄則については、5月18日発売した以下新著の第5章をご参照頂きたい。
新著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日発売中!
コメント