ロイター社コラム、掲載されました。
 
「米国経済は尻上がりに改善、1ドル再び100円も」
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一部引用:「おそらく来年にかけて米国経済は尻上がりに良くなる。
もしも米国経済が今年失速すれば、世界経済全体に再び暗雲がたれ込むことになる。そのようなリスクはゼロではないが、杞憂に終わる公算が高い。これまでの様々な悲観論の流布にもかかわらず、リーマンショック後に米国経済が辿っている軌跡は、1990年以降の日本のそれとは明らかに違う。そうした事情を以下に確認してみよう。
 
19日のFOMC声明文とバーナンキ議長の記者会見では、「今後の経済データが現在の我々の見込みと概ね一致する場合には」、現在の量的金融緩和のための債券購入額は今年の後半から減じ、来年半ばまでには停止されるのが妥当だという方針が述べられた。
 
これに反応して、直後の金融・投資市場ではとりあえず債券売り、株売りの動きとなった。今後債券については価格下落(利回り上昇)基調となろうが、景気回復が持続する限り株価の堅調基調が大きく崩れる公算は低い。
赤線が推計値の内訳から資産効果(住宅と株式)部分を抜き出したものであり、リーマンショックの年の08年から09年後半までマイナスとなった後、10年にプラスに転じたが、住宅価格が再度低迷した11年はほぼゼロ近辺となっていた。ところが12年後半から再びプラスに転じ、足元の13年は0.8―1.0%ほど個人消費支出を押し上げている(プラスの資産効果)。
 
13年第1四半期の実質GDP成長率2.4%に基づいて、この資産効果の規模を考えてみよう。同期間の政府部門の支出は前年同期比でマイナス2.3%、個人消費支出は前年同期比でプラス2.1%だった。米国の個人消費支出の規模はGDPの約7割を占め、政府部門支出の4倍である。
 
したがってプラス1%の正の資産効果による個人消費支出の押し上げは、今年の第2四半期以降の政府部門支出がマイナス4%になってもそれを相殺し得ることになる。
 
結論として米国経済は順風下にある。今年の実質GDP成長率は通年2%台に乗り、来年は3%前後となるだろう。ドル円相場について言えば、前回のコラム「この先のドル買いはハイリスク・ローリターン」(here)で警鐘したとおり、100円超えの水準で一段の円安・ドル高予想に煽(あお)られて、損失を被った方々も少なくないようだが、今年の後半には再度100円前後の円安・ドル高のチャンスがあるかもしれない。」
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
追記:6月21日
山上えつ子さんの論考
私とは対照的にリスクの方を強調している。数ヵ月後に結果を比較してみましょう。
「QE縮小相場第2弾」は危機への入り口か
 
引用:「このようなQE縮小相場第2弾は何をもたらすだろうか。米国経済に対しては長期金利の上昇および株式相場の下落が景気回復の勢いを削ぐリスクがあり、一部エマージング諸国には急速な資本流出が為替レートの急降下をもたらし、国内にインフレと景気減速、金融市場の不安定化をもたらすリスクがある。そして、エマージング市場の混乱がグローバルに波及していくというのが最悪シナリオだ。
 
米国の景気は回復基調にあるとはいえ、低金利を主因とする住宅市場の改善と資産価格の上昇を背景とする堅調な個人消費がけん引役だ。製造業には弱さがあり、また歳出一律削減の影響もあり政府支出はマイナスである。ここで長期金利が上昇すると、米国景気は回復の力を失う。外需はすでに弱いが、エマージング諸国の景気が減速すれば、一段とマイナスの力が加わることになる。まして、エマージング諸国の一角に金融危機が発生すれば、米国も再びQEに逆戻りといったことにすらなりかねない。」
竹中コメント:米国だって、世界のエマージング諸国の事情まで勘案しながら自国の金融政策を運営することはしないし、できない。E諸国が国際的な資金移動で揺れて困るというならば、各国でしっかりと資本移動規制をするしかないでしょう。 
 
追記その2:倉都康行さんの論考、見ている材料は私とほとんど違いありませんが、米国経済の先行きについては慎重論(悲観論?)です。 やはり数カ月後にふり返ってみましょう。
引用:「今回の成長見通しに関しても、財政政策は強制歳出削減で硬直化したままであり、企業の設備投資は回復せず、新興国経済の急速な冷え込みで製造業の新規受注は停滞中である現状を考えれば、かなり甘い見通しだと言わざるを得ず、IMFの1.9%予想や世銀の2.0%予想の方に現実味を感じる。ウォール街の予想もほぼ2%前後だ。金融緩和の効果で住宅市況と自動車販売は確かに好調だが、この2分野だけで景気を引っ張ることは難しい。」
 
竹中コメント:5月に出した1ドル100円越えのドル円相場に関する判断とは違って、米国経済の先行きについては、現状の材料をベースに楽観論も悲観論も双方可能です。しかし「どっちもあり得る」では話にならないので、まあ私の場合は強気に賭けてみましょうということです。(倉都さんは実は私と東京銀行の同期で、お互いよく知っている間柄です(^^)v )