さて、慌ただしく11月も終わり、明日から師走月ですね。
今年1年間の私の相場コメントをレビューして来年への方針を考えます。
 
1、日本株
言うまでもなく2009年以来の水面下(評価損)でのナンピン買いがついに報われた急浮上の1年でした。私の年初1月の予想は以下のロイターコラムの通りでした。
 
引用:「今年の世界経済が再び景気後退に逆戻りするようなことがない限り、日本株の上昇余地は大きい。目先1―2年では東証株価指数(TOPIX)で1100(1月11日終値898)、日経平均で1万3000円台(1月11日終値1万0801円)、中期的にはその水準からさらに10―20%程度の上昇余地があるだろう。」
 
日経平均1万3500円をベースに10~20%は、14,850円~16,200円ですから、まずまずの予想でしたね。もっとも私が「中期的」と言う場合は1年~3年程度の期間を想定しているので、今年の5月に1万5000円台まで一気に急騰した日本株は、テンポ速過ぎでしたね。 こんな短期の変化は事前に予想可能な範囲ではありません。
 
またその後6月にかけての高値から約20%の反落を経て、企業収益の回復を背景に再度1万5000円台まで上がって来たことは、5月と違って違和感はありません。
 
ただし目先のリスクは軒並みヘッジファンドが、日本株、円売りで持高を膨らましているという情報です。メディアでも報道されているし、金融機関の市場部門の方々からも同じことを耳にします。
この点は後述します。
 
2、円相場
まず以下の5月22日付ロイターコラムで、100円越えのドル円相場が実質相場指数で見て、「ドル高・円安のラフ」への突っ込みであることを指摘して、「ここから先のドル高はハイリスク・ローリターン」と指摘しました。
引用:「行き過ぎるのも相場なので、目先105―110円の円安・ドル高もあるかもしれないが、長期的にはこの水準からのドル投資は「降雨確率80%」にもかかわらず傘を持たずに外出するのと同じだ。」
 
他のマーケット・エコノミストやストラテジストが中期の予想を軒並み110円とか120円とかドル高円安に変更する中で、この予想は光りましたね(^。^)
 
実際、6月にドル円相場は93円台までのドル反落でした。もっともこの時も、こんな短期の変動は事前に予想不能、私は相場の行き過ぎを指摘しただけです。でも、行き過ぎ相場の後追いをしなければ、短期的な反落で大きく損失するリスクも回避できる。これが肝心でしょう。
 
そしてドル相場が高値103円台から大きく下落した6月の局面で次の論考をロイターに出しました。
(6月20日「米国経済は尻上がりに改善、ドル再び100円台も」)
引用:「おそらく来年にかけて米国経済は尻上がりに良くなる。もしも米国経済が今年失速すれば、世界経済全体に再び暗雲がたれ込むことになる。そのようなリスクはゼロではないが、杞憂に終わる公算が高い。
・・・・ドル円相場について言えば、前回のコラム「この先のドル買いはハイリスク・ローリターン」で警鐘を鳴らしたが・・・・今年の後半には再度100円前後の円安・ドル高のチャンスがあるかもしれない
 
6月以降のドル円相場はいったん101円台まで7月に上がりましたが、その後は90円台後半での膠着でした。そして11月に入って来年の米国景気見通しが強気になるに従って100円台に乗って来ました。従って、この6月の予想もほぼ的確だったと言って良いかな。
 
ただしひとつ外したかもしれません。「今年の米国実質GDPは2%を超える」と上記のコラムで書いていますが、どうやら(まだ第4半期が出ていません)通年で1%台後半の水準になりそうです。
 
3、REITと不動産
2月のロイターコラム「REITバブル再来の可能性」で次のように指摘しました。
引用:「投資家にとって気になるのは、目先どこまで割高方向に上昇するかだ。むろん、そんな予測は、地震の予知以上に原理的に困難である。それに、REIT価格のミニバブル的な高騰とその後の崩壊を経験した日本の投資家だけならば、投資家層の記憶力と学習能力がよほど貧困でないかぎり、07年のような割高水準までの高騰は期待しない方が良いだろうと筆者は考えていた。
 
ところが、この点で注目すべき変化が起こっているかもしれない。アジアでの新興REIT投資家層の登場だ。アジアではシンガポールのREIT指数であるSTREIT指数が12 年に45%(米ドルベース)上昇し、香港のハンセンREIT指数も36%上昇するなど、REIT市場の活況が日本より一足先に起こっている。
REIT市場は株や債券市場に比べれば狭隘(きょうあい)な市場だ。中国を含むアジアの新興投資家のマネーが日本でもREITの新たな買手に加われば(すでに流入しているのかもしれない)、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」の例え通り、日本のREIT市場が再びミニバブル的な高騰を起こす可能性が高くなるだろう。割安圏でREITを購入できた投資家には、楽しみな局面となってきた。」
 
さらにREITの高騰が顕著になった4月に(高値は5月)に、やはりロイターコラムで以下のように書きました。「REIT高騰に続くか、マンション投資の鉄則
 
引用:「 前回のコラムで日本の不動産投資信託(REIT)市場が再びミニバブル的な高騰を起こす可能性を指摘したが、まさにその通りの展開になってきた。
3月以降のREIT相場は賃料収入との比較、予定配当利回り、あるいはP/NAV指標(投資口価格/1口当たりの純資産額)など、いずれの指標でみても、ますます割高になっており、その割高度は2007年の前回ピーク時に匹敵するか、それ以上だ。
 
一方で、個別の商業ビルやマンションなどの現物の不動産物件の価格は、統計データで見る限り昨年の水準と比較して今のところ目立った上昇は示していない。たとえば、東京都区部の中古マンション価格指数(IPD・リクルート住宅価格指数)は12年12月時点で底を打ったものの、13年2月時点では底値から0.2%の上昇にとどまっている。
 
実体経済の景気回復が持続する限り、今後数カ月のうちに現物不動産価格の上昇がデータでも明瞭に確認できるものになるだろう。結論として、今の局面で合理的な投資選択は、すでに著しく割高になったREITから、まだ相対的に割安に放置されている個別不動産物件にシフトすることだろう。」
 
実際にREIT相場は5月が高値になりましたね。現在もその時の高値を更新できていません。
 
一方、春時点ではまだ目立って上昇していなかった東京の現物不動産は、中古マンションで見ると東京都心5区の平均平米単価は今年8月-10月では前年同期比11%の上昇です(^。^)
私のポートフォリオの比重では、やはりマンションが一番大きいので、これが一番嬉しいですね。
 
以上、レビューすると、私の今年の投資予想コメントは、株、円相場、不動産の3面で「神的」な的中率でした(自画自賛にて失礼)。 もちろん、私は「卓上エコノミスト」ではありませんので、自分自身のポートフォリオも上記判断に従って操作しています。
 
私の場合、短期的な収益マグニチュードではドル円や株の変化が大きいですが、中期長期的には一番大きいのはやはり、REIT&不動産(マンション)です。
 
4、現下の相場動向「ヘッジファンド相場」との付き合い方
現在の円安&日本株上昇相場の特徴はひと言で言うと「ヘッジファンド相場」だということです。連中は様々な手口でやっていますが、時々「美人投票」の意見が一致する時があるんですね。
 
「おい、ここはひとつ『日本美人』で勝負してみようぜ、アベノミクスなんて言っているしさ」
「そうだな、『BRICS美人』はもう当分見込み薄だし、『ゴールド美人』も凋落やしな・・・」
「てなこと言っていたら、東京オリンピックなんて風まで吹き出したぞ」
「俺も乗るわ。今期は儲けイマイチなんで、クリスマス前でも稼がないと、とびそうだしね」
 
まあ、こんな雰囲気じゃないでしょうか。報道記事をひとつだけ引用すると
日経新聞記事11月26日
「25日の市場ではこんな声が聞かれた。「今年まだ稼げていないヘッジファンドが日本株買い・円売りを中心に仕掛けている」。緩和マネーが米欧の株式相場を下支えするという安心感がある。」
「「株高をけん引してきたのは海外ヘッジファンドなど短期筋の円売り・株買い」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジスト)とされる。一方で、相場の短期的な過熱を警戒する声も増えている。」
 
ヘッジファンド相場は、1990年代に銀行で通貨オプションのチーフディーラーだった時から幾度か大きな波を経験してきました。
 
例えば1995年の1ドル80円からの円安・ドル高を起こした主因(すくなくともそのひとつ)はヘッジファンドの円売りキャリートレードの流行でした。97年前半までは円安・日本株高のトレンドでしたが、タイバーツの相場急落、タイ中銀介入ギブアップで始まったアジア通貨危機(97年7月)以降は、円安・日本株売りに転換して行きましたね。
そして98年秋にLTCMの事実上の破綻と円相場急騰・ドル急落の超大荒れ相場で終わりました。
 
最近では、09年の危機底打ちから10年までの新興国急回復相場もヘッジファンドの動きによるところが大きかったと思います。やはり10年に新興国の株も通貨相場も下落して終わりました。
 
今年の5月の日本株反落(高値から約20%)、円相場急騰・ドル急反落(ドル高値から約10円)もやはり、連中のポジション巻き戻しが大きかったと思います。
 
連中は基本的には数カ月から1年程度のサイクルで利食い、あるいは手仕舞を入れてきますので、いつまでもトレンドに乗っていると最後に手痛く振り落とされます。過熱感が出てきたら(その判断が微妙ですが)、売り上がって利益を現金化しておくことが肝心です。
 
もちろん、高値のタイミング、その水準なんて合理的な予想はできないでしょう。
むしろ自分の「欲望とリスク耐久度」で判断した方が良いでしょう。
 
ちなみに、私はドル建て金融資産の為替ヘッジ率(ドル建て金融に対するFXによるドル売り持高の比率)を今回の100円越えで55%まで上げました。また日本株は、今回の1万5000円台で更に売って、昨年暮れに持っていた日本株投資残高の約半分を現金化しました。
 
ドルも日本株もまだ上がれば分割して売り上がります。まあ、現状ではこの程度のヘッジ率、あるいは現金化率を持っていれば、5月のような反落局面があっても、また反落をテイクチャンスした買いをする余裕が持てるという判断によるものです。
 
直感的には来年春頃までに目立った反落場面がある気がします(合理的な根拠はないです)。どのくらいの深さになるかは、これもわかりませんが、直近高値から10%~15%でしょうかねえ(?_?)
 
追記:
私は短期の予想はしません。
そんな猫の目のように変わるもの、わかりませんからね。
その代わり、中長期の視点で「割安・割高」という判断を基調にしています。

従って、その正否は中長期の時間を経てからでないと判定できないのですが、
今年は割安・割高の判断が短期的なタイムスパンで実現してしまった。

その結果、短期的にも予想が的中した様に見える結果となった。
これが自己点検レビューの本当のところです。
 
追記:本日12月2日の日経新聞記事
「「ヘッジファンドで最初に動いたのは(先物投資中心の)CTA (商品投資顧問)。次いでグローバルマクロなどが追随した」。BNPパリバ証券の丸山俊チーフ・ストラテジストはそう話す。「米緩和策が長期化しても、米国の景気が堅調ならば円高にはならない」という理屈で、高値更新を続ける米国株に比べて出遅れていた日本株を買い、割高だった円を売るポジションを一気に積み上げたという」
 
金融緩和の長期化⇔米国景気の堅調、どう考えても中長期に併存が持続する関係じゃないだろ。
どうも短期的な薄気味悪さがただよう。 日本株もドルも、もう少し売っておこうかな。
 
追記:12月4日 WSJ(日本語版、12月3日付)
引用:「現在の米国株市場では、弱気のポジションを取っていると認める主要投資家などほとんど見られない。実際、各種の調査によると、投資顧問や個人投資家の間で、強気筋に対する弱気筋の割合がここまで低くなったことはほとんどなかった。
これは昔からよくある逆張り投資のシグナルだ。
 
追記:Can the U.S. Economy Recover Without Asset Bubbles?