12月から一段と円安が進み、ドル円相場はしっかりと100円台に乗って来ましたね。今年のドル高値は?1ドル=110円とか115円とかの予想が一般的のようですが、以前から指摘しております通り、長期的には既にドル割高圏であることをお忘れなく。
以下にドル円の実質相場指数と名目相場のグラフを更新して掲載しました。弊著の読者はご承知のことですが、1973年以来の実質相場指数(日本は企業物価、米国は生産者物価ベース)の平均値からプラスマイナス10%を私は「フェアウェー」のめどとして、そこから下方はドル安・円高のラフ、上方はドル高・円安のラフと呼んでおります。
多くの方は、やはり私が勤務していた時に始めた国際通貨研究所のPPP(購買力平価)図表(以下)で90年代以降、企業物価・生産者物価ベースのPPPを名目相場が越えるとドル高値圏のサインだというようにご覧になっているでしょう。ただし、PPPはどの時点を起点にするかで、3種のPPPの位置関係も含めてグラフの形状ががらりと変わってしまいます(起点依存)。
http://www.iima.or.jp/research/ppp/index.html (国際通貨研究所、PPP図表)
ですから、特定の物価指数のPPPグラフをチャートの抵抗線や支持線のようなイメージで受けとめることは根拠がありません。これはエコノミスト風の方でも時々勘違いされている方がいるので強調しておきますね。
特定の起点に依存しない見方は、実質相場指数にして、その長期的な平均値を計測し、その平均値からの乖離を見ることでできます。 実質相場指数は以下の計算式で算出されるものですので、名目相場をPPPに照らしてみるということと同じことですが、長期の平均値を見ることで、特定時点の起点依存から生じるイメージのバイアスを回避できます。
実質相場指数=名目相場/PPP×100
私が著作の中で強調しているように、名目為替相場がPPPから乖離と回帰を繰り返すということは、実質相場指数はその長期の平均値からの乖離と回帰を繰り返すということと同じことです。
現下の104円前後のドル円相場は明瞭にドル高のラフに突入してきました。もっともボール(相場)がどこまで深くラフに入り込むかについては、一般化できるような経験則はありません。私は昨年暮れから2014年のドル円相場はドルの高値圏は105円前後、オーバーシュートで110円前後もあるかもしれない、という予想でいました。今もそれは変わりません。
ちなみに現在の私のドル建て資産(株式と債券)に対するFXでのドル売りヘッジ比率は68%、平均ドル売り持値100円台です。
PPP,あるいは実質相場指数関連の最近の変化でちょっと気に留めておくべき点は、企業物価指数(米国は生産者物価指数)ベースでは、対前年同月比の変化で日米逆転が生じていることでしょうか。
日本の物価指数(2013年11月)は対前年比2.7%、米国は0.7%です(下段の図)。
1970年代以降で見る限り、日米のこの物価指数の逆転は極めて短期的にか生じていません。物価指数の内訳を見ると、日本では「電力・都市ガス・水道」(ウエイト5.3%)が前年同月比+10.8%、「石油・石炭製品」(ウエイト5.7%)が+12.6%となっており、一方米国の生産者物価指数は足元でエネルギー関係の項目の低下が見られます。
すなわち、円安で海外からのエネルギー関係の価格が日本では上がり、米国ではシェールガス、シェールオイルなどの増産でエネルギー価格が下がっていることが主因で、企業物価、生産者物価の日米対照的な変化が生じているようです。 この要因は、特に米国については、中期的に持続しそうですから、注意しておく価値がありうそうです。
例えば、2%の同物価指数の日米逆転状態が1年続けば、PPPは約2円ドル高・円安方向にシフトしますからね。
追記:最下段に1995年3月を起点にしたPPP図表を添付しました。図表の形状が様変わりになることをご覧ください。
追記2:(1月8日)
ロイター社コラムでカレツキー氏が2014年の日本について「再度景気後退、株価暴落」との強く悲観的な見方を述べています。
私は4月の消費税引き上げ後に消費の反動減は必然的にあるものの、景気後退に逆戻りはないとコンセンサス予測に近い見方をしています。
どうなりますかね?6か月後にレビューしてみましょう。
記事:「日本は2014年の期待を裏切る主要な国となる可能性が高い。昨年アベノミクスで沸き上がった市場への楽観も損なわれてしまうだろう。
4月に行われる消費増税は、景気の腰折れを防ぐためのその他の措置を考慮したとしても、日本を第2・四半期までに景気後退へと逆戻りさせ、株式市場も暴落する。日銀が金融緩和を強化し、これ以上円安が進んだとしても結果は変わらないだろう。」
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYEA0502D20140106
私は4月の消費税引き上げ後に消費の反動減は必然的にあるものの、景気後退に逆戻りはないとコンセンサス予測に近い見方をしています。
どうなりますかね?6か月後にレビューしてみましょう。
記事:「日本は2014年の期待を裏切る主要な国となる可能性が高い。昨年アベノミクスで沸き上がった市場への楽観も損なわれてしまうだろう。
4月に行われる消費増税は、景気の腰折れを防ぐためのその他の措置を考慮したとしても、日本を第2・四半期までに景気後退へと逆戻りさせ、株式市場も暴落する。日銀が金融緩和を強化し、これ以上円安が進んだとしても結果は変わらないだろう。」
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYEA0502D20140106
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日