毎度のトムソン・ロイター社コラム、本日午後掲載されました。↓
冒頭部分一部引用:「経常収支の赤字が大きいなどファンダメンタルな脆弱性を抱える新興国の経済・金融面の動揺で、為替相場と株価は再び波乱局面に入る雲行きだ。これら新興国は「フラジャイル5」(インド、インドネシア、ブラジル、トルコ、南アフリカ)と呼ばれているが、直近ではアルゼンチンも加わって「フラジャイル6」となっている。
米国の量的金融緩和縮小が新興国から投資資金の引き揚げを起こし、それが動揺の原因となっているとの解説が一般には流布しているが、やや近視眼的な見方だろう。
昨年7月30日掲載の本コラム「新興国襲ったドルキャリー巻き戻しの残存リスク」で指摘した通り、経済協力開発機構(OECD)の景気動向指数を見れば、これら新興国の景気動向は2011年から波打ちながらもスローダウンする局面に入っていることが明らかだ。投資資金の対外的な流出・引き揚げ、株価の低迷も当該諸国のファンダメンタルな変化を反映しているに過ぎない。
これは株価指数の動向にも明確に現れている。新興国の合成株価指数であるMSCIエマージング(ドル建て)は11年4月に高値をつけてから、以後一度もその高値を更新することなく低迷している。一方、米国株価は高値を更新し、日本株も日経平均でリーマンショック前の07年末の水準を超えた。
アンチ・アベノミクスの論者らは、現在の日本の景気回復は蜃気楼の様なもので、4月の消費税率引き上げを契機にアベノミクスは幻想だったことが明らかになるだろうと、陰鬱な見通しを呪詛のように繰り返している。(←本論とはあまり関係ないのですが、どうしても書いておきたかったので(^_^;))
筆者は現在の景気回復は実体を伴うものであり、消費税率引き上げ後、駆け込み需要の反動減による一時的な後退はあるものの景気の腰折れはないと考えている。
いずれにせよ、今年第2四半期以降も景気回復が持続するかどうかは、これまでの経済政策論争のひとつの決着点になると同時に日本経済の長期的な分岐点にすらなるだろう。」
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見通しの結論は以下の通り。
目先:一時的に100円割れの円高も
中期(1年から2、3年程度まで):円安持続(ただし1ドル=120円とか、それを越えるような超円安の蓋然性は現時点では低い)
長期:円高に回帰(日米インフレ率の持続的な逆転は起こらず、相場はPPPに回帰する)
また、貿易収支の赤字を長期的円安要因として重視する方がいますが、貿易収支は所得収支、各種資本収支と並んで国際収支項目、あるいは為替需給項目のひとつに過ぎませんので、それだけ特別視して「貿易収支赤=円安」という見方は一面的すぎます。
追記(2月3日):気がついているかな? CGO IMMのNon-Commercial筋の円売り持高(1月28日時点)が、ピーク時(昨年12月24日)から40%ほど減少していますよ。
それだけ巻き戻しても105円から102円程度への戻りですんでいるのは、102円台で円売りしている参加者がけっこういるということでしょうかね。押し目を買うのが好きな日本のFXプレーヤーかな?
直感的にはもうちょっと円高・ドル安に行きそうな感じがしますが・・・・さて、どうかな。
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日