中国の専門家から、各種メディアまで、さんざん書いていることだから新味ないけど、記録のために書いておこう。
 
まず、三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司の「経済週報」から
 
引用:「2013年の金融機関の分野別貸出統計レポート」では、不動産向け貸出が貸出全体の3割を占めており、同割合は前年比3ポイント近く上昇したことが明らかになった。詳細は以下の通り。

主要金融機関、小規模農村金融機関及び外資銀行における不動産向け貸出は、残高ベースで前年比
+19.1%の14兆6,100億元、貸出全体の伸び率(+14.1%)を5ポイント上回った。新規貸出ベースでは2兆3,400億元と前年対比9,987億元の大幅増と、新規貸出全体の28.1%を占めており、同割合は2012年末より10.7ポイント高かった。」
 
「内訳をみると、①土地開発向け貸出残高は前年比+9.8%の1兆700億元、②不動産デベロッパー向け貸出残高は同+16.3%の3兆5,200億元(①+②=不動産開発向け貸出残高)、③個人住宅ローン残高は同+21%の9兆8,000億元。2013年の新規貸出額は1兆7,000億元と前年同期より7,389億元の増加となった。」
 
これを見る限り、中央政府の不動産投資抑制の号令は、ほとんど効いていないと言って良いようだね。
地方政府にしてみれば、歳入の不動産収入への依存が高く、これを止めろといっても止められない、そう言う状態が続いている。 
 
「バブルにソフト・ランディングなし」と言っておこうか。問題はいつ、どういう形でバブル崩壊が起こるかだけだ。
 
本日(2月25日)の日経新聞の報道も、なかなか不気味だ(^_^;)
引用:「 【上海=土居倫之】中国で24日、不動産市況の先行き懸念が再燃した。準大手の「興業銀行」が不動産会社向け一部貸し出しを停止したことが伝わり、株式市場では「資金繰り悪化につながる」との見方から不動産株が急落した。最大手の万科企業の株価は前週末比6%超下落した。
 
興業銀が停止したのは一般的な無担保融資より経営破綻時の弁済順位が低い劣後債や劣後ローンなど。銀行にとっては、一般的な融資より高い利回りが得られる一方、リスクが高い特徴がある。株式と融資の中間的な位置付けなため、メザニン(中二階)融資とも呼ばれる。
興業銀は行内に「全ての不動産会社向けメザニン融資の手続きを全行で停止する」と通知した。同通知によると、「経済が下向きの状況下で、リスクが急激に高まっており、いったん問題が生じると、処置が難しくなる」としている。同行はこうした融資の残高を公表していない。
興業銀行は国内7番目の規模。四大国有銀行に比べれば弱い顧客基盤を補うため、不動産向け融資には積極的だった。その興業銀行の方針転換を受けて上海株式市場では24日、不動産株が急落した。」
雰囲気的には2007年春頃の米国、それまでサブプライムの証券化などを手掛けていた金融機関が損失を出して撤退を発表し始めた頃の状況に良く似ている。 バブル崩壊的な状況が誰の目にも明らかになったのは、同じ年の7月から8月、BNPパリバ系のヘッジファンドなどが行き詰ったり、証券化商品に莫大に投資していた欧州の地方銀行の巨額損失が報道された時だった。
私達の問題は、中国の不動産バブルが世界経済にどう波及し得るか。常識的に考えて、中国の不動産融資関連のリスク商品を保有している在海外の投資家、海外金融機関はほとんどいないだろうから、米国のケースのような波及経路はないはず。
そうするとむしろ日本の90年代前半の不動産バブル崩壊パターンに近いのではなかろうか。リスクは国内の銀行に集中していたケースだ。海外への金融取引を通じた波及はほとんどなかった。
中国でのバブル崩壊で人民元相場が下落するとは限らない。損失の穴埋めのために、合法、非合法の形で中国から海外に投資されている資産が売却されて本国回帰するかもしれないからだ(外貨売り・人民元買い)。  
日本でも90年代前半は95年の1ドル=80円に向けての円高が進行した時期だった。それまで外貨投資の主体だった日本の機関投資家が、不動産と株価の急落で財務体力を急減させ、海外投資をストップしたら、海外資産のリストラ的処分を進めた結果、経常収支の黒字分だけ需給的に円高に傾斜した結果だった。
だから世界経済への影響は、中国の経済成長失速→中国の輸入縮小という貿易面からの波及だろう。中国向け輸出比率の高い諸国にはマイナスだが、米国、日本、欧州の景気回復を頓挫させるほどのインパクトにはならないで済むかもしれない。
5年後に不動産が暴落した上海でマンションの底値拾いショッピングなんてできると楽しいのだが、信頼できるエージェントを確保できないから、個人投資家には無理そうだな。
(以下グラフは上記日経新聞記事に掲載されたものです)
 
追記(2月27日):
記事引用:「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の推計によると、中国非金融企業の借り入れと債券合わせた総債務残高は昨年末に約12兆ドルとなり、国内総生産(GDP)の120%相当を超えた。
債務の増加ペースは前代未聞だ。
トムソン・ロイターが、上場している中・大規模の非金融企業945社を分析したところ、総債務残高は2008年12月の1兆8200億元(2984億ドル)から、13年9月には260%以上増えて4兆7400億元(7773億ドル)となった。
S&Pのリー氏によると、中国企業の問題を深刻化させているのは、2008年の世界金融危機に対応した4兆元の景気刺激策の使い道だ。「資金が容易に調達できたため、多くの企業は競争が激しくリターンの低いプロジェクトに積極投資した。そうした投資は不調で、利益にほとんど貢献していない」という。」
一方、 以下のような見方もある。一理あると思うが、私には国家権力が強力であるほど、その間違いも途方もなく大きくなるという気がする。
引用:「中央政府の手足である国有銀行が支配する比較的未発達な金融システムは実際、市場主導型で複雑な民間金融機関のネットワークよりも安定させやすい。・・・・中央政府は、破綻した銀行や地方政府の救済を引き受けるには十分過ぎるほど頑強な財政を有する」
追記(2月28日):引用「「安全」と「高利回り」は二律背反のはずであり、この歪んだ「元本保証」慣行はやっかいな問題を生んでいる。理財商品の支払事故は、いまは一部の地方や業種の現象に止まっているが、今後増大していくことは避けられない。それに、2件の事故事案は、いずれも債務者企業が民営企業だ。政府系でもない企業の債務不履行までいちいち銀行や政府が尻拭いしていたら、損失負担が大きく積み上がってしまう。」
 
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
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