毎度の私のトムソン・ロイター社での論考です。
一部引用:「筆者は昨年4月の本コラム『REIT高騰に続くか、マンション投資の鉄則』(13年4月19日掲載)でREIT価格と現物不動産価格の変化に数カ月のタイムラグがあることを指摘して次のように述べた。
『今の局面で合理的な投資選択は、すでに著しく割高になったREITから、まだ相対的に割安に放置されている個別不動産物件にシフトすることだろう』『実体経済の景気回復が持続する限り、今後数カ月のうちに現物不動産価格の上昇がデータでも明瞭に確認できるものになるだろう』。 その後の変化は、筆者の指摘通りとなった。
こうしたマンションを中心とする不動産価格の上昇は今後も持続するだろうか。結論を先に言うと、価格の割安局面はすでに終わった。今後の価格動向は住宅賃料の上昇、さらにそれを可能にする賃金の増加が実現するかどうかにかかっている。」
「13年以降の直近の変化で気になる点は、価格が上昇したにもかかわらず賃料が目立って上昇していないことだ。14年1月のデータでは都区部の価格は前年同月比8.4%上昇しているが、賃料は同0.5%の上昇にとどまっている。
賃料と価格の変化は正の相関関係があるが、05年以降のデータに基づく限り、賃料の変化は価格の変化に6カ月から1年遅行している(ゼロからプラスマイナス1の値をとる相関係数は約0.7)。これは賃貸契約が一般に2年間契約で更新されることから生じるタイムラグだと考えれば納得できる。
したがって今年、遅行していた住宅賃料の上昇が起こらないと、価格の持続的な上昇は再び11年のように頓挫する可能性が高くなる。なぜ賃料が上がらないのだろうか。賃料は短期的には住宅をめぐる様々な需給要因に左右されるが、長期的には賃金所得の上昇を伴わない賃料上昇はあり得ない。」
「もしも『賃金上昇、国内物価上昇、賃金上昇』の連鎖が始動しなかった場合には、住宅賃料も目立って上昇せず、その結果マンション価格も頭打ちとなり、やがて景気の後退とともに再度下落に転じる公算が高くなるだろう。
マイルドなインフレを伴う持続的な景気回復となるか、あるいは景気の腰折れとともにデフレに回帰し、株や住宅などの資産価格も下落に転じ、アベノミクスは水泡に帰すか、14年はその分岐点となる。筆者は基本的に前者の楽観シナリオを想定しているが、後者のリスクシナリオも無視できない程度の可能性があろう。」
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別件:同日の3月6日ワカバヤシFXで講演して来ました。 大手町のファーストスクエアビルで120人ほどの聴衆、盛況でした。
私の講演(第1部)、若林栄四さんの講演は第2部、本ブログの読者はお分かりだと思いますが、若林さんは徹底的な罫線信奉者ですから、「実証派エコノミスト」を自認する私とは水と油ぐらい違います。
当然聴衆の方々も罫線信奉者が多いようですが、講演後の懇親会での感じでは、私の講演内容はかなり好評でした。持参した弊著も完売。 まあ、「実証的に考えると・・・」という分析にあまりふれたことがない方々が多かったので、新鮮に感じたのかもしれませんね(^_^;)
若林さんが講演の中で強調していた点を以下記録のために書いておきますね(青字)。
米国は一部のエリート層が富を独占する強欲資本主義になってしまった。ミドルクラスが細っている。これでは経済はダメになる。(懇親会で「Pクルーグマンやステグリッツ並みのご判断、リベラル派になられたんですね」と申し上げたら、「オレは元々リベラルだ」とのお答えでした)
米国株は既に上がり過ぎ。今年は反落する。反落と回復を繰り返しながら、2022年まで下落トレンドとなる。
日本株は米国株が下がる場面ではやはり下がるだろうが、大底を既にうったので、基調は上げトレンド。
一方、ゴールド(ドル建て)は十分に下がった。ここからは上がる。
ドルの対円相場は上がり過ぎ。今年は90円近辺までの反落あり。そこは買うべき。
アベノミクスなんて信用ができない。今年は安倍首相は経済情勢で苦戦するだろう。
量的金融緩和なんて信用できない。東大法学部卒の黒田総裁は相場や経済がわかっていない。
講演後の懇親会で一部の方にはお話し致しましたが、若林さんの相場観は相場の転換点はわりと良い感じで当てるんですが、相場が「大衆化」してくるととたんに、その相場トレンドが嫌になり、トレンドと反対のことを言う癖が強いです。これは私は知っている30年前から変わりません(^_^;)
ところが、相場は「大衆化」してから長いトレンドが続くことが多いのですね。そこではずれます。
今回も2012年が円高のピークで円安になる・・・てのは上手く当てられたようですが、2013年に「アベノミクスで円安」というシナリオが大衆化するやいなや、その円安トレンド嫌になって、そこから外しているそうです。
そういうご本人の癖、バイアスを調整して聞いた方が良いですよ、ということを参加者の幾人かにコメントしたら、「なるほど、確かに・・・・」との反応。聴衆はみな「若林信奉者」かと思いきや、けっこう冷静に見ているんですね。
結果として、なかなか楽しい講演会でした(^。^) またご講師でご招聘頂けないかな・・・。
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日