最近の米国の株価上昇は「量的金融緩和(非伝統的金融政策)による超低金利の産物だから、金利が上がり出したら一気にしぼむよ」というようなコメントは、かなり言われていることだ。特に株ベアーの論者が口にすることが多いかな。
 
このブログのリピーターの方からは、「米国株のPERが過去の長期的な平均値と比べて割高とか言われますが、趨勢的に金利も低下しているのでその分は株高・PER高も正当化できるんじゃないですか」という趣旨のご質問を頂いた記憶がある。
 
金利水準調整後のPERという概念もあるが、それ自体の変動がかなり大きい。名目金利と株価の水準は当然かなりばらつきのある関係だ。 そこで以下の図のように、10年物米国債利回りとS&P500ベースの一株当り利益率(=PERの逆数)の相関関係をグラフにしてみた。
 
関係性は有意で、決定係数R2=0.40、相関係数=0.635、まずまずの相関度だ。
一応以下のような判断ができるかもしれない。 
 
近似線の左上エリア:利益率が国債利回りよりも相対的に高く、株価が相対的に割安
近似線の右下エリア:利益率が国債利回りよりも相対的に低く、株価が相対的に割高
 
近似線の傾きは0.6325で、これは国債利回り1%の変化が利益率0.6325%の変化に対応していることを意味する。利益率0.6325%の変化は現在のPERの水準をベースにすると約11%の変化(PER20→17.8)に相当するので、今後国債利回りが1%上がると、一株当り利益に変化がなければ株価は11%下落する関係があるということだ。
 
また近似線の方程式のY切片は2.37、これは国債利回りゼロ%の時の一株当り利益率が2.37%という意味だから、株式投資のリスク・プレミアムは2.37%という含意になろうか(?)。
 
図上での現在の位置は、国債利回り2.5%をベースにすると、近似線の左上であり、国債利回りに比べて利益率の方が高く、株価は割高とは言えないということになるが・・・・・この関係性はかなりばらつきが大きいことに留意しておこう。
 
例えば国債利回りを説明変数、一株当り利益率を被説明変数にした単回帰分析で得られる標準誤差(2/3の確率で値が分布する範囲)は2.1%だ。 これは国債利回りが同じでも利益率は±2.1%の範囲に2/3の確率で分布することを意味する(残りの1/3の確率で、その外に分布する)。
 
2.1%という利益率の変化は、現在のPERの水準をベースにすると約30%の変化に相当する。これは言い換えると、一株当り利益が同じでも、2/3の確率で株価は±30%異なる水準になり得るということを意味する。
 
±30%のブレというのはかなり大きいから、この関係性だけを頼りに株価の割高・割安を判断するのは無理があるだろう・・・ということになってしまう。
 
まあ、株価というのは不確実な変動性が高いものだと今さらながら覚悟するしかないね(^_^;)
 
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日
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