来年から相続税の基礎控除額が大きく減額され、税率も一部引き上げられる。その対策のためにマンションを購入する動きがある。 マンション業者や仲介業者も相続税対策顧客を引き込もうと動いている。
 
相続税の改正については以下国税庁のサイトご参照
 
マンション購入・相続にした場合、「購入額>相続税評価額」となるので確かに節税効果がある。
 
しかし新築を買えば「新築プレミアム」が約20%ものっている。購入後テナントを入れた時点で即20%市場価格が下落する。    中古で買っても、現在の中古価格は東京都区部では2012年の底値圏から約13%も上昇しており、家賃との比較で割高感が強まっている。 急いで買おうとするほど、割高な価格をつかむリスクが高くなる。 
 
ロイターの論考やこのブログで書いてきた通り、買い時は2013年前半で終わってしまっている。長期的な観点から合理的な投資を志向するならば、次の不況、景気後退局面までマンション購入はやめた方が良いよ、というのが私の投資判断。
 
ロイター掲載論考、2013年4月
 
以下掲載の東京都区部の中古マンションの価格、賃料、PRR指数(Price Rent Ratio=価格/賃料)の推移をご覧頂きたい。PRRの示す割高度は既にリーマンショック前に不動産プチバブルとなった2007年を越えた。
 
今後、賃料が上がり、価格が上がらなければ、割高度は低下する可能性もゼロではない。しかし賃料が上がる条件は、所得が上がることだ。つまり景気回復が腰折れずに継続するということ、しかしゼロ金利でマネージャブジャブにしている環境で景気回復が続けば、どう考えてもマンション価格もさらに上がるだろう。その場合はPRRが示す割高状態は解消しないということだ。
 
逆にもし景気が腰折れてしまったら、価格は今が循環的なピークで今後下がる。 そうなるかどうかはわからないが、2007年の割高水準を超えた今の局面でひとつぐらいは売っておこう、という判断に至った。そこで私が保有しているマンションのうち、築年数、保有期間ともに一番長いものを売りに出したわけだ。
 
仲介業者を換えながら粘っていたかいがあった。2002年に準新築で当初価格より20%強ほど値引いて買ったマンション(ローン・キャンセルで売れ残った最後のひとつ)だが、買った時よりも約10%高く売ることができた。もっとも仲介業者に払う仲介手数料、これから払う譲渡益に対する税金などを差し引くと、買値とあまり変わらない価格、つまり手数料&税引き後でキャピタル・ゲインはゼロに近い。
 
しかしそれで良いんだ。この投資はEXITまで辿りついて十分に成功、なぜか?賃料所得のリターンで稼いできたからだ。 ローン7割でスタートした当初の5年間はレバレッジが効いているので、自己資金に対する投資リターンは年率10%をゆうに超えていた。 2007年に別の中古物件を売った余資でローンは返済したので、2008年以降の年率リターンは約6%弱に低下した(賃料は全額私の純所得となった)が、12年間のIRR(内部収益率)を計算すると約7%だった。
 
7%という年率リターンは10年間複利で運用すると資産価値が倍になる水準だ。過去のデフレ下の日本では十分なリターンだと思う。
 
以下のグラフを見て、それでも今から買って勝ち越せると思うのは、かなりの強気だろう。勝てる確率が明らかに低下しているのに、無理に強気で投資を実行するというのは、危ない。
 
追加情報(11月20日):「都心高層マンションに群がる富裕層たち、本当に相続税対策に有効か」