ついにユーロ圏のデフレ(消費者物価下落)が始まった。かなり前から予想していたことだが。
 
Eurozone Consumer Prices Fall for First Time in Five Years  WSJ dated 2015 Jan. 7
quote : The European Union’s statistics agency on Wednesday said consumer prices last month
were 0.2% below their December 2013 levels. That was the first year-over-year fall since October
2009, which marked the last in a sequence of five months during which prices were lower than
 
以下は毎日新聞社エコノミストの2010年11月臨時増刊号に私が寄稿した「国際通貨史」の「ユーロの挑戦と矛盾」の一節。 
 
引用:「通貨統合前であれば、対外不均衡がなんらかの限度を超えた時点で、PIIGS諸国の為替相場が下落し、調整機能が働く。自国通貨の相場が下落するということは、外貨建てで計算した場合の労働コストが低下する(自国の労働が安く売られる)ことだからだ。しかしこうした為替相場による調整機能は通貨統合によって放棄された。
 
ならばどのように調整は働くのだろうか?PIIGS諸国の物価と労賃がドイツに比較して下がることによって調整されるしかない。つまりドイツのインフレ率が趨勢的に上昇するか、あるいはPIIGS諸国がドイツより低インフレ・デフレになるしかない。ところがドイツは趨勢的に低インフレ経済で国民や政府にもアンチ・インフレ機運が強いので前者の選択肢はないだろう。
 
すると、PIIGS諸国が今後デフレ圧力を甘受することによってしか調整は働かない。
 
しかしデフレは負債コストを押し上げることで、投資を萎縮させ、経済成長にネガティブな効果を持つ。これがPIIGS諸国(ユーロ圏のGDPの約3割を占める)とユーロ圏の現在の憂鬱の根底にある問題なのだ。」 
全文は次のホームページで閲覧可)
 
ECBはここからどうするのだろう? 日米と同じように国債の大規模購入による量的金融緩和に動くのだろうか? ECBが国債を大規模に買うことは、財政規律の弱い国の財政をいわゆるマネタイゼーションでファイナンスすることになるとしてドイツなどが強く反対してきたことだが、背に腹は換えられなくなるのだろうか?
 
一度「デフレ期待」が定着すると、量的金融緩和でもなかなか容易には抜け出せなくなることは、日本の過去の経験が示している。
 
ユーロ圏も黒田日銀のような超大規模な量的金融緩和を実施すれば、ユーロ相場の一層の下落でインフレ率を押上げることはできるかもしれない。しかしそのような超大規模な緩和にドイツがOKを出しそうな雰囲気は伝わってこない。
 
ギリシャはもう見限るとしても、イタリアやスペインの労働者や技術者がドイツ人のように行動して働けるようになるまで、デフレ圧力は止まらないってことになるかな。けっこう無理すじだね・・・(^_^;)
 
 結果として、ユーロ圏の景気低迷はまだまだ続きそうな感じがする。
 
追記(1月11日):ドルユーロ、名目相場と実質相場指数推移グラフ
以下にグラフ掲載しました。
1月9日時点の1.1844という名目相場水準は、実質相場指数では93.30で、99年以来の平均値103.55から約10%下方に乖離した水準です。
 
上下の水平の黄色線は、実質相場指数がその平均値から1標準偏差乖離した水準で、3分の2の確率で実質相場指数はこの上下の幅の中におさまっていたことを示しています(逆に言うと3分の1の確率で範囲外にとび出した)。
 
あと数%下がったら、対ドルでユーロのナンピン買いをしてみるのも、面白いかも・・・・とちょっと思える水準でしょうかね。
 
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
↑New!YouTube(ダイビング動画)(^^)v
 
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