投資に関心がある方なら、名前ぐらいは誰でも知っている米国の大富豪のひとり、ジム・ロジャーズ、この方がどういう投資で儲けて来たのか、私はほとんど知らないのだが、時々見かけるコメントには奇妙なものが多い。
目についたので以下に引用、コメントしておこうか。
引用元記事:「ジム・ロジャーズ独占インタビュー『私もしばらくは日本株を買い続ける』 世界3大投資家には、その先まで見えていた」
奇妙コメントその1:「円はこの3年間で、ドルに対して40%以上価値が下がりました。これは驚くべきことです。世界史の教科書をひっくり返してみても、たった3年の間に主要国の通貨が40%以上も価値を下げたなんて事例は見つかりませんからね。だから、このような円安が続くことになれば、最終的には日本経済が破壊されることになるでしょう。」
事実:ドルは対円で1985年年初の250円前後から3年後には120円台に下落、約50%も価値を下落した。 また円を含む主要先進国通貨に対する加重平均で見ても、同3年間にドルは約40%下落した。
奇妙コメントその2:「為替の問題はとても難しい。適正なレートなど、実際は存在しないからです。」
事実:私の読者、ブログのリピータの方々はご承知の通りだが、為替相場は相対的購買力平価に対する乖離と回帰を繰り返し、長期的には相対的購買力平価に収束する。これは経済学界で広く認められている実証的な事実だ。つまり適切な物価指数で計算された相対的購買力平価が長期的に適正な相場(均衡値)と考えられている。
奇妙コメントその3:「3兆ドルをプレゼントしてもらえば、誰だってハッピーになります。FRBがそれだけのおカネを刷って、ばらまいているから、おカネが回ってくる人たちはハッピー。ただそれだけで、実体を伴っていない。だから私は今は、アメリカ株を買いません。」
これは明らかにFRBの量的金融緩和のことを言っているのだが、FRBから「お金のプレゼント」をもらった人(機関)は誰もいない。 量的金融緩和政策では、金融機関が国債や証券化債券をFRBに売り、その対価としてFRBに金融機関が保有している当座預金にマネー(ベースマネー)を振り込んだだけだ。つまり民間金融機関の資産構成が変わっただけのこと。
しかもこのベースマネーは、一般な通貨の定義であるマネー供給量(紙幣発行残高+個人や法人が銀行に保有する流動性預金残高)には含まれない。 マネー供給量(マネーストック)が増えるのは次の2つの場合のみだ。①ベースマネーを見合いに銀行の貸出が増え、その結果同時に預金が増える。②国債などを保有していた個人や法人から銀行がそれを買って、対価を売り手の預金口座に入金する。
ロジャース氏の学歴はwikiによると以下の通りで、なかなかの高学歴である。
「1964年 - エール大学を卒業(学士)。オックスフォード大学へ留学、1966年 -同大学卒業(修士)」
またwikiには次のようにも記載されている。 「いつもポジションをとるのが早過ぎるとして、下手なトレーダーを自称している。 クォンタム・ファンドを2人で始めたときは、ジム・ロジャーズがアナリスト的な役割で、ジョージ・ソロスがトレーダー的な役割だったと、ジャック・D・シュワッガーの著書「マーケットの魔術師」で答えている。また、ジョージ・ソロスも自著"Soros on Soros"の中で、クォンタム・ファンド運営ではジム・ロジャーズがアナリストだったと述べている。」
ソロスとコンビを組んで大富豪になった元アナリストが、なぜ1985年のプラザ合意前後のような大きな相場変動局面について事実関係を正しく認識していないのか(その1)、大学の経済学部で読む教科書(金融論、国際金融論)に書かれていることを理解していれば言わないような間違いを言うのか(その2と3)、私にはわからない。
大富豪投資家のバフェットさんの語りには、私は高い知性を感じるが、ロジャーズ氏には感じることができない。
もしかしたら昔は敏腕だったが、その後は勉強・調査もすることなく、脳の老化現象が進行しているのかもしれない。