私が著作で度々紹介し、ホームページで公開している東京の中古マンション価格指数、賃料指数、そしてPRR(Price Rent Ratio=Price/Rent)のグラフを更新したので、このブログで強調しておこうか。

PRRは私が著作などで繰り返し説明している住宅価格の割高・割安を見抜く指標であり、グラフでは赤線で示してある。株価のPER(株価収益率)に準じた概念だ。

一目でわかる通り、東京で内外の不動産ファンドがプチバブルに踊った2006-07年を超える割高圏に突入している。今回の特徴は賃料の伸びが非常に鈍く、ほとんどフラットに近いことだ。2006-07年の時はもう少し賃料の上昇があったのだが。

理由は明白で、名目賃金の伸びが依然鈍いからだろう。ローンで買ってしまう住宅価格と違って、ローンで賃料を払う人はいないので、賃料の変化は専ら賃金所得の伸びに依存しているということだ。

企業利益の伸びが絶好調なのに、賃金の伸びが冴えない構造については、前回「円安がもたらす国内所得分配への影響」で書いた通りだ。この先、景気の回復がさらに続けば、賃金の伸びももう少し高くなってくる・・・そうすれば賃料ももうちょっと上がる、と予想しているが、それでも既にかなり割高になってしまった価格のほんの一部を正当化するだけだろう。

誰が割高になったマンションを買っているのかについては、例えば日経新聞の以下の記事が報じていることに違和感はない。

「不動産、中国リスクの影 富裕層マネーの退潮懸念」
日本経済新聞(7月10日付)

引用:「都心のマンション価格はリーマン・ショック前と同じ6000万円台に上昇した。「買い手は節税対策の日本の富裕層と海外マネーが中心」(野村証券の福島大輔アナリスト)という不動産市場で「都心立地を好む中国人客は最後の買い手」(大手不動産会社幹部)なのだ。

中国人が日本で不動産を買う際は全額現金で払うケースが多い。個人が中国から資金を海外に持ち出すのは難しいとされるが「海外企業設立や留学資金など名目を変える方法はたくさんある」(不動産関係者)。

上海株相場の崩落が予感させるのは、様々な経路で日本の不動産に流れ込んでいる中国の富裕層マネーが細る懸念だ。」
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超スローモーションで崩壊する中国不動産バブルの最中に、官制株式バブルが超高速で膨張と崩壊を起こした現象は、非常に興味深いが、これを契機にアジアからの不動産マネーが細るのかどうかはよくわからない。むしろ、汚職摘発と不動産バブル崩壊が進むおかげで、ますます海外に逃げる資金が増えるというシナリオもあり得るからだ。

しかし、2007年夏のサブプライム危機を契機に、日本でも外資系の不動産ファンドが一斉に停止、あるいは撤退をしたことを想起しておこうか。まあ、それでもそういう変化に鈍感な投資家、事業家もいたので、私は07年夏秋に2物件高値圏で売り抜くことができたわけだが。

2015年のこんな割高圏で買えば、投資の失敗は約束されているようなものと思うのだが、買っている連中も「2020年のオリンピック前に売り抜く」が合言葉になっているとか。本当に多数派がその気なら、そのシナリオはどこかで崩れるのが必然だろう。 

私自身は2012年から14年に、築浅の物件を今から見るとかなり安めに(リターン高めに)複数買うことができた一方、長く保有した物件を2つ高値圏で売ることができ、ポートフォリオの入れ替え完了。 株価も上がってくれたおかげで、半分以上売って得た資金で、ローンの返済も完了したので、ここは当分様子見といこうか。