BIS(国際決済銀行)がサイトで主要国のセクター別債務(credit)残高の長期時系列データを開示していることに気が付いた。 バブルとその崩壊は、必ず信用の急速な膨張とその後の信用収縮を起こす。 従って、近年IMFや各国中銀が力を入れている「バブル・モニター」のためのデータ整備の一環として行われたのかもしれない。 以下サイト
さっそく、これを使って中国の信用膨張状況について他国と比較したところ、途方もない姿が浮き上がって来たので、とりあえずここに開示しておこうか。
まず1段目の図はセクター別に中国の債務残高のGDP比率の推移を示したものだ。民間非金融部門の債務(credit)比率はもともと右肩上がりに増加してきたが、2009年以降、GDP比率で見て増加のテンポが著しく上がり、200%を超えた。
リーマンショック後の世界不況に対して、財政資金よりも金融資金を総動員して行った4兆元の需要創出策が、債務の膨張に拍車をかけたのだろう。おそらく地方政府が作った融資プラットフォームは形態は民間なので、このカテゴリーに入っていると思われる。
2段目の円グラフは、2015年6月時点の同残高規模を主要新興国をピックアップして比べたものだ。
規模において中国の残高が圧倒的であることがわかる。額はドル換算
3段目の図は、同債務残高を日米欧で比較したものだ。中国のそれは既にユーロ圏を抜き、米国の同残高に迫っている。
4、5段目の表は、各国の上記残高とそのGDP比率だ。中国の民間非金融部門の債務GDP比率は201%で、ここにピックアップした全ての国の中で突出している。 これは債務のグロス残高であり、一般に金融が発達し、負債の見合いとなる資産も蓄積した先進国では、この比率は高くなる傾向があるようだ。しかし、中国の債務GDP比率は、主要他新興国はもとより、日米欧の比率を越えて突出している。
つまり、中国経済は途方もない速度と規模で債務を膨張しながら、成長してきたのであり、それがこれまでの高成長のエンジンでもあった。それを可能にしたのは、農民から土地を徴発して進められた様々な固定資本形成だ。
その結果、自動車、鉄鋼分野などで他国では考えられないような過剰生産力を抱え、また住民もテナントも入らないゴーストタウンやゴースト工場団地を莫大に建設して、失速していると言っていいだろう。
中国の民間非金融部門の債務比率が日米欧の平均値並に下がるとしても、GDP比率で40%もの圧縮になる。 おそらく債務の相当な部分は返済不能となる(なっている)。 中国経済の今後には、悪い意味で想像を超えた展開が待ち受けていると思った方がよいかもしれない。
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