円相場が円高方向に大きく戻ったので、実質相場指数を更新した。HPでの更新は後日となるので、先にブログで掲載しておこう。
1ドル=111円の名目相場指数は、実質相場指数(1973年起点=100、日本の企業物価と米国の生産者物価指数ベース)では111.50である。一方、1973年以来の実質相場指数の平均値は90.97だ。
つまりボール(名目相場)はまだまだ円安のラフであり、私が「フェアウエー」とよんでいる長期平均値から±1標準偏差の範囲にすら戻っていない。
かねてから繰り返しているように、名目相場/相対的PPPで計算される実質相場指数は、長期的な平均値からの乖離と回帰を繰り返す。 相対的PPP自体は、特定の起点に形状も水準も依存しているので、名目相場が相対的PPPに回帰するというのは誤った理解である。回帰する中心は実質相場指数の長期平均値である。
国際通貨研究所の相対的PPP図表とデータ:
また、マイナス金利導入の為替相場へのインパクトは、ドル円の金利差拡大による円安効果である。ただし今回は、原油安や新興国売りを下地に、昨年夏から余震が続いているチャイナショックに欧州の銀行不安などが重なり、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まる状況下で、既存の円売り持高の崩れ(円買い)や、それを誘発しようとする円買いの投機的な仕掛けなどが働いて、円高への戻りが生じたと理解できる。 すでにシカゴIMMのnon-commercialの持高は円ロングであることに注意しておこう。http://www.gaitame.com/market/imm.html
目先の短期的な相場動向は不確実でわからないが、このまま一気に円高に行くと言うよりは、2012年12月からアベノミクスで始まった円安トレンドが、ひとつのピークを過ぎたという程度に受けとめておいた方が良いだろう。 黒田総裁は「必要なもっとマイナス金利にする」ともコメントしているので、黒田緩兵衛殿の逆襲は今後もあり得る。
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日