毎度のトムソン・ロイター社のコラム、本日午後の掲載
以下冒頭部分
引用:「英国の欧州連合(EU)離脱の国民投票結果を受けた世界的な株価急落、日本ではそれに円高が加わり経済の先行きに対する不安感が強まっている。しかし、1ドル100円近辺のドル円相場は、日米のインフレ率を調整した実質ドル円相場の水準としては、1973年以来の長期平均値より依然として10%弱の円安水準である。
筆者は、アベノミクスの発動によって1ドル80円も超えていた「行き過ぎた円高」が是正されたことを評価している。一方、実質相場で見る限り、125円まで進んだ円安は日本のインフレ期待の先行と日米金利差の拡大見通しに誘引された一時的なオーバーシュート(行き過ぎ)であることを本コラムで強調してきた(「実質相場指数が示唆するドル高の天井圏」2014年11月6日)。
この円安のオーバーシュートはメーカーなど輸出系企業を中心に企業利益の上振れをもたらしたが、それは一時の「ボーナス」のようなもので、いずれ剥げ落ちることは必然だったと言える。
昨年の本コラム「日本に灯る円高デフレ回帰の黄色信号」(2015年10月27日)で指摘した通り、異次元的な量的金融緩和で穏やかなインフレに移行するという目論見は、雇用と企業利益の回復にもかかわらず賃金伸び率が抑制され過ぎた結果、頓挫してしまった。
現状は「赤色」とは言わないが、すでに「オレンジ色」になっている。もはや追加的な金融緩和が行われても1ドル120円はもとより、目先110円以上に押し戻すことも難しいだろう。
必要以上に企業心理を冷え込ませないために、急激な円高には円売り介入も必要かもしれない。しかし、「円安ボーナス期」が終わった以上、現水準かあるいはそれ以上の円高水準を前提に、企業は長期的な経営戦略を、政府は日本経済の成長戦略を完遂するしかない。
この長期的な視点では筆者はそれほど悲観的ではない。短期から中期(1年から3年前後)の時間軸では、世界経済を下振れさせるリスク要因が目立つが、より長期的には新たな技術革新の波で一段の経済的豊かさが拓かれる「画期」に差しかかっている。おそらくそのフロントランナーはやはり米国だろうが、日本にもチャンスはある。
ただし、変革期は勃興と衰亡が同時に起こる。その変革に積極的に適応する社会、業界、企業、個人と、それに失敗するものとの格差も拡大するだろう。これをご説明しよう・・・」
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ロイターサイトでは図表がひとつしか掲載できないので、以下にコラム本文の順に従って関連図表を3つ掲載しておこう。
図1
図2
図3(掲載図と同じ)
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日
追加図:英国ポンドの対ユーロ、対米ドル相場、名目と実質