早川書房、2016年7月

面白い。

内容的にはこれまで行動経済学の代表的な研究成果として紹介されていることなんだが、リチャード・セイラー教授がまだ「駆け出しの若造」だった頃から、合理的期待形成や効率的市場仮説を信奉する主流派の経済学者らに、ある時は叩かれ、ある時は無視されながら歩んできたプロセスが語られている。
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論敵の先生方みなご指名で登場し、「あの時、この方はこう言って叩いてくれた」「この方は、こんなことまで言ってくれたよね」とセイラー教授のジョークをまぶして仕上がっている。その意味では「Rセイラーの逆襲」と題してもいい。

今では行動経済学派の創始者的存在のジョージ・アカロフ博士を含め幾人もノーベル経済学賞を授与され、確固たる流れを占めるようになった学派であるが、主流派との論争は尽きない。

わたし的には第6部「効率的市場仮説に抗う」が一番面白く、幣著「なぜ人は市場に踊らされるのか」(2010年)「稼ぐ経済学」(2013年)でも強調した視点、論点が論じられている。
まるで私自身が書いたような文章に出会う(^ ^;))。

大学のゼミでは、幣著「稼ぐ経済学」のあとバートン・マルキール著の「ウォール街のランダムウォーカー」をテキストで勉強させているのだが、マルキールの論理的な不整合、つぎはぎ的な折衷にもかかわらず、効率的市場仮説の擁護に固執する感じにだんだん嫌気がさしてきた。

この秋スタートする演習では、「ランダムウォーカー」の最後の凡庸な章をスキップして、この本の第6部「効率的市場仮説に抗う」を読ませることにしよう。