さて、前回応え切れなかったコメントについて補足しておこう。公務員の人件費について、そんなに目立った削減余地はなかろう、と私が書いたことへ以下のような反論コメントがあった。
「公務員の人件費総額は年間30兆円と述べられていますが、30兆円と改めて考えてみると、ぎょっとしませんか?歳出92.3兆円から国債発行44兆円を引くと48.3兆円です。そうすると人件費の30兆円というのは借金以外の歳出の62%を占めます。それこそ景気対策の10兆円近いお金をマイナスすると、80%近くが人件費になります。」
公務員の人件費削減の余地にかんする私のコメントはラフ過ぎる、あるいは脇があまいものであった点をとりあえず素直に認めておこう。これは今後公務員の制度改革問題できちんと政府、国会で取り上げる必要がある。
私の「公務員の給与が民間に比べて高すぎるとは思わない」というのは、独立行政法人化前までは公務員だった国立大学の同クラスの教員の年俸に関する耳情報(年俸が安いのでちょっとぎょっとした)などを基に出てきたイメージ的な判断に過ぎない。
ただ幾点か指摘しておこうか。
まず、公務員数は約400万人、人件費総額約30兆円というのは、地方自治体を含めた全国ベースの数字である。従って、30兆円が占める分母は政府一般会計の92兆円ではなく、地方自治体の財政予算約90兆円も合計した182兆円のうち30兆円、約17%である。また、地方自治体の予算に占める人件費は総務省のこの資料の中で公表されているが、27.4%(2010年度)だ。
また、公務員の組織に効率化の余地がある可能性を認めるものの、単純に人を減らして効率化できない部分も小さくないことを指摘しておこうか。例えば、公立学校の教員、小中高で1学級40人の生徒数を50人に増やせば、教育サービスの労働生産性は25%上昇するだろうか。 それではどうしても教育サービスの質が低下するだろう。私はそんな教育の質の低下は亡国の道だと思う。
こうした状況も踏まえて、公務員の人件費にどれほど効率化余地があるかどうかは、マクロのデータだけで判断するのは、どう考えても限界があると考えを改めた。
この点は、地方、中央双方の公務員制度改革として政府、国会でやっていただくしかない。ただし、「公務員の人件費削減が徹底的に行なわれない限り、一切の増税に反対する」という主張にもしなってしまうならば、滝に向かって流れて行くボートの中で、滝に落ちない方向に向かってボートを漕ぐのがどちらの仕事であるかを議論するような愚かしさとむなしさを感じざるを得ない。