たけなかまさはるブログ

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2010年06月

今日はいろいろな出来事がありまして。
 
まずはハトポッポ首相の辞任
 6月1日に首相は次のように語っていた。「鳩山由紀夫首相は1日朝、参院を中心に民主党内で退陣論が出ていることについて『代表・幹事長でしっかりと協議をして、協力してこの国難に立ち向かっていく。』」(日経新聞)
 これを見て、思った。「おいおい、あなたご自身が国難しょうが・・・
そして本日2日の辞任発表。
最後まで明日はどう振れるか分からない方だった。
でもひとつだけ、最後に良いことをしたと私には思える。
自分の辞任を小沢幹事長の辞任と抱き合わせにしたこと。
 
昨年12月28日に日経ビジネスオンラインに「もう鳩山首相を諦める?~友愛という名の優柔不断が日本を壊す」を書いて、短期の景気対策は必要だが、財源なきバラマキ政策はやめてくれ、長期的には消費税の引き上げを含めた財政再建のビジョンを描け、と主張した時には、反発コメント殺到し、アクセス件数もトップになってしまった。「悪役人気」というのだろうか。
 
とりわけ印象的なコメントは「首相が優柔不断などとの、発言を慎むことですね。それは天に向かって唾しているようなものです」と、お叱りまで受けた。ははは、不謹慎ですみませんが、笑った。
ようやく鳩山首相の評価に関する天の采配は決した。
でも、ご本人は「自分がしたことは10年、20年先を見据えてのこと、それが分かってもらえる時がくる」と言っているそうだが・・・・。
 
郵政法案は廃案へ?
 今回の辞任の影響をうけた注目の問題が「郵政改革法案」の廃案の見通し?
 
「16日までの会期を延長しない方針のため、残りの審議日数を考えると、郵政改革法案の今国会での成立は困難な情勢となった。 民主党の平田健二参院国対委員長は2日の記者会見で、「日程が限られるため、(成立させる)法案を絞り込まなければならない」と強調。同党国対幹部は郵政法案について「参院選を控え、強行採決はできない」と述べ、野党の反対を踏まえ成立は困難との見通しを示した。今国会で成立しなければ審議未了で廃案となる。」(3日時事通信)
 
 アンチ小泉改革の象徴として亀井大臣がこだわった本件、超少数政党が与党と連立を組むというポリティカル・レバレッジで不相応な政治力を行使する状況は、これを契機に止めて欲しい。
 
祝内定
 これは私個人の職業上のこと。
昨年から大学で教鞭をとるようになったので、私のゼミ生はまだ3年生で、就活はまだ少し先だ。
 しかし、今の4年生でひとり、昨年の暮れに私の講義が終わってから教壇のところにきて、どんと分厚い参考書を広げ、「私、来春公務員試験を受けようと思っているんですが、試験用の参考書の経済学の章が全然分からないんです。先生、私でも分かるようになんとかしてください!」と言った学生君がいた。
 「いきなり、分かるようにしてくれと言ってもね・・・魔法はないんだから・・・きみ」と言うと、「先生の講義を聞いて、私でも分かりました。だから先生なら私でもミクロ経済論もマクロ経済論も、分かるように説明してくれるんじゃないかと思うんです。」
 
 これにはけっこう衝撃を受けた。
 
 「ぼく、どこが分からないか分かりません」という状態でホゲーとしている学生君が少なくない中で、「私でも分かるようにしてくれ!」と教師に迫ってくる学生は貴重だ。それでもって、結局、計10回ほどかけて参考書の経済学の章を個人指導した。
 この学生君、その後就活はどうなっただろうかと思っていたが、今日偶然、大学近くでこの学生君に呼び止められた。ニコニコしながら、「公務員試験は結局その後諦めましたが、○○銀行に内定を得ました。先生に教わったことはペーパーテストでも役立ちました。ご連絡が遅れてすみませんでした!」と言う。中京地域の名のある地方銀行だ。
 この就職難のなかである。「上出来、上出来、よくやった」と祝福した。
 
 教師としては、ひとりでも多くの学生が学ぶことの価値に目覚め、社会で活躍する第一歩を無事に踏み出して欲しいと心底願っているんだけど、それが伝わる学生君は残念ながらそう多くはない。

米国の住宅市場の調整は終わったか?
先日頂いた以下のご質問について、手短に意見を申し上げよう。
 
「サブプライム問題発祥の米国の不動産価格は果たして割高か、そろそろ均衡価格に近づいたのか?いかがなもんなのでしょうか?今年後半の重要なテーマになりつつあるような気がしております。」
 
この問題、長く議論すると様々な材料を引用して、いくらでも「ああだ、こうだ」と議論できるんだが、あえて思い切り凝縮させて、私の意見を言うと以下の通り。
 
1、以下に示したS&Pケースシラー指数とCPIの家賃指数から計算した私のPRR (Price Rent Ratio:ご存じない方は、つぎのどちらかの弊著ご参照、「今こそ知りたい資産運用のセオリー」「なぜ人は市場に踊らされるのか?」) これを見る限り、過去20年間のデータに基づいて、米国の住宅価格指数は2006年のピークから35%下落した昨年の4月で、いったん底を打ったように見える。つまり過去20年間のPRRの平均値に戻ったので、割高感の調整は終わった。
しかし、バブル崩壊のあとによくある反動での割安レンジへの突入が不足しているようにも見える。
 
2、住宅への財政的な助成処置は今年4月で終了、終了前の駆け込みで4月の販売データは上がっているが、5月以降は反動減が必至。
 
3、住宅価格が上がれば売りたい潜在的な売り手(債務者)はまだ多い。
 
4、住宅不履行による差し押さえ件数は、今年も年間300万件レベルの高い水準が見込まれている。
 
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以上の結果、住宅価格は底を打ったものの2010年いっぱいは概ね横ばいで、強い反発はなさそう。
住宅価格の上昇は2011年以降だろう。
これが私の結論。
それが今年の米国経済に与える影響は?
住宅価格が上がらないと個人消費も伸びないのでは?
 
この点は、それほど悲観的に考えいない。S&P500の企業利益は世界経済の回復で概ね順調に回復しているので、ギリシャ危機の問題が欧州外に波及しないことが見えてくれば、米国企業の株価はまた上昇トレンドを再開し、家計消費の負の資産効果は大きくならないと思う。
 
この点詳しくは、昨年8月に書いた論考「米国経済の復活~過大評価されている家計のバランス・シート調整のインパクト」をご参照頂きたい。その後の展開は、概ねこの論考で予想した通りに展開している。
 
むしろますます悲観的に見ているのは欧州の事情だ。今回、「失われた10年」になる危険性が高いのは(きっとそうなるというほどの自信はないが)、今回は米国でも日本でもなく、欧州だと思う。
 
追記
以下のイラスト画像は、昨年8月29日のThe Economistに掲載されたもので、 "Signs of stabilization   should not obscure the big problem still ahead"と題して、回復の兆しはみせかけで、この後まだまだひどいことになるぞ、という記事だった。しかし、「大空振り」となった。雑誌の記事がかなり高い頻度で市場の変化の「逆指標」となることは、日本でも欧米でもだいたい同じ。
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