たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2010年10月

今日の日銀政策決定会合に関しての報道、5兆円程度の基金を設けて国債や他の民間金融資産も買うという「一段の量的緩和」について
 
コールレートを0.1%から0.0%まで下げるというのは、ほんとんど意味がない。以前デフレシリーズで語った通り、既に金利水準の変更が効果を持たないデフレ均衡・ゼロ金利ゾーンに入っているからだ。そうでなくても0.1%の変化に意味のある効果があるはずもない。
 
意味があるのは国債から他の民間金融資産まで対象に買い上げる基金をつくって、金融資産買い・マネー供給をする点。この点で5兆円と書いている報道と35兆円と書いている報道がある。どちらが正しいか? 日銀の発表文書は以下の通りとなっている。
 
「基金の規模
基金の規模は、買入資産(5兆円程度)と、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(30兆円程度)を合わせ、35兆円程度とすることを軸に検討する。
② 買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に、長期国債および国庫短期証券は合計3.5兆円程度、CP、ABCPおよび社債は合計1兆円程度、総計の残高が5兆円程度となるよう買入れを進めることを軸に検討する。」
 
従って、買い入れ資産規模は5兆円と受け止めるのが正しいようだ。
また次のようにも書いている。
 
「買入対照資産等
資産買入れの対象としては、長期国債、国庫短期証券、コマーシャル・ぺ-パー(CP)、資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)について検討する。
資産買入れ以外の資金供給の方法としては、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行う。」
 
5兆円という規模は中途半端、いや、小さすぎてインパクトに欠ける。
そのせいか、株式は小反発したが、ドル円相場はわずかにしか反応していない。
どうせなら「最大50兆円まで」と言えば、ぶっとんだに違いない。
 
 ただし、ETF, REITまで対象にしたのは評価できる。ただし問題は実際にどの程度買うかだ。
ついでに「国債だけ買うとインフレになって金利が上がった時に、国債価格が下落して損失するから、
インフレヘッジのために株とかREITもたんまり買うよ」とコメントを付せば、国債ばかり買っていた投資家や金融機関はたまげて、国債から実物資産へのシフトを進めるはずだ。
資産デフレから緩やかながら資産インフレに転じれば、プラスの資産効果(消費の増加)も出て、実体経済にも好影響が期待できると思う。
 
市場参加者は112-3日の米国FOMCでどのような量的緩和策が出るかどうかに関心がいっている。
FOMCで量的に大胆なものが出れば、今回の日銀の対策効果は、ドル円相場については打ち消されて円高ドル安に進むだろうと考えている連中がまだ多いということだろう。
さて、どうなるかな。
 
追記:
11月2-3日のFOMCで量的緩和追加策が出るのは、これまでのFRBの言動から見て、ほぼ間違いない感じ。問題はその規模と内容でしょう。 発表後、ど~んと一段の円高となるかどうか? それは対応するポジションの積み上がり具合による。
 
シカコIMMの9月28日時点ポジションはドル売り・円買い持ち高が、9月15日の介入で半減した後、再び少し円買い増加、しかし介入前の6割程度にとどまっている。
一方、ユーロでのドル売りが増加している。円では介入リスクがあるが、ユーロではないから、短期的にドル売りするならユーロの方が分が良い、と考えた結果だろう。
 

今日、10月4日付のWSJの“Americans Sour on Trade”という記事が目に止まって読んだ。
「アメリカン・サワーっていうカクテルの取引かい?」
ちゃうちゃう。
「アメリカ人が貿易で酸っぱい思いしている」
もうちょっと・・・
 
日本では「Sour(サワー)」というと、すっきりした爽快感のイメージになぜかなるのだが、アメリカ人にとってsourは、酸っぱい=まずい=不愉快の意味になる。
副題は;Majority Say Free-Trade Pacts Have Hurt U.S.
 
要するに「自由貿易協定なんかくそくらえだ」「中国の野郎、自国の為替相場を操作して、安い製品ガンガン輸出して、アメリカから雇用を奪っているのさ」というムードになってしまっているという記事。
 
それも、低所得層から高所得層、ブルカラーからかなり知的労働層まで、そういう気持ちに傾斜していると記事は言う。11月の中間選挙を控えた議員さん方は、言うに及ばない。
 
まあ、経済が停滞して失業率が上昇している時は、いつもそういう意見が台頭するのだが、今回は失業率が9%台と30年ぶりの高さだし、それが長引きそうなので、あなどると見誤るかもしれない。
 
「大きな政府、反対」「増税反対」「オバマのヘルスケア・リフォーム反対」で政治的な台風の目になっているTEA Party運動が、もし保護主義に傾斜したりすると、保護主義の力もけっこう大ごとになるかもしれない。
 
1980年初頭のアメリカの不況の時は、やはり失業率が10%前後まで上昇し、当時は日本、特に日本の自動車輸出が目の敵にされて、バッシングされた。 90年代になってもクリントン政権で日米貿易問題で執拗に攻撃された。 今度は中国が標的になっているのだが、日本と違って脅せば折れる相手じゃなさそう。 で、どうする? 対中輸入関税で報復やっちゃうか?
 
そうなればむき出しの保護主義となり、つまりはケンカだ。
エコノミストが当然の議論として、「自由貿易は双方の国の利益になります」とリカード以来の比較優位と自由貿易の原理を説いても、「おまえは、すっこんでいろ!」状態になるかも・・・。
 
ちなみに、比較優位・劣位の概念は、今日でも、世間で最も広く誤って理解されている経済理論のひとつだね。
 
日本政府には、とばっちりを食わぬように、上手に立ち回って欲しいのだが・・・。
 

↑このページのトップヘ