たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2011年03月

日本株の下げっぷりが、なかなか凄いものになってきた。私のポートフォリオに占める日本株比率は
REITを含めて12~13%で実はあまり高くない。それでもこれだけ下がると目に見えた損失額になる。
どこが底か分からんし、怖いけど、ちびっとだけなんぴんしてみようかなと言う気になってきた。
 
今回の地震の経済的な損失について、ダイヤモンドオンラインで佐藤主光教授が暫定的な推計と断った上で数字をあげている。以下サイト
 
いくつか政策的に大事な指摘をしているのでちょっと引用しておこう。
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「被災地域は多くの過疎地域・限界集落も抱えている。こうした地域を「原形復旧」することは、過疎問題の本質的な解決にはならない。これを契機に地域の再編成、場合によっては危険地域からの撤退も視野に入れる必要があるように思う。」
「阪神淡路大震災でも、被災地域の区画整理などは複雑な権利関係・意識があって時間を要した。極端なやり方としては甚大な被災を被ったエリアを国・県が収用して(所有者には一定額を補償)、早急に新しい街づくりを始めるべきだろう。」
 
「政府はこれから次の3者と対話しなければならない。第1は被災者であり、彼らに向かってこれからの実施できる支援を明確にする必要がある。政府が「できること」と「できないこと」をはっきりと分けた説明が求められるだろう。
 第2は市場。(国債だけではなく、株式等を含む)市場からの信認を取り付け続ける努力を意識して行っていかなければならない。
 第3は納税者である。自民党からも臨時増税の提案が出ているが、いずれ復興のための増税が求められることになる。その際「助け合い」だけで納税者を説得できるかどうか、それは疑問だ。単に情に訴えるだけではなく、日本経済にとって、よって納税者自身にとっても何故、被災地域の復興が重要なのか説得力(ロジックとエビデンス)をもって説明しなければならない。
 今回の震災は戦後最大の国家危機かもしれない。ただ、戦後があれば高度成長があったように、震災からの復興を次の成長、産業の振興に結びつけられるかがカギになるはずだ。」
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失われたもの(人命と資産価値=ストック)は取り戻しようがないので、問題はフロー(GDP)の下方屈折を起こさないような、できれば復興需要でフローをかさ上げするような政策が望まれる。その点で福島原発の動向がリスク要因だ。電力不足が長期化すれば、それがボトルネックになったフローの拡大が制約されるからだ。 
しかし海水を注入してしまった原子炉はもうそのまま復旧することはないそうだ。
短期的にどういう電力のやりくりが可能なのか私にはわからないので、電力不足がどれだけ長期化するのか、しないですむのか、分からない。東電は他発電設備の思い切った増設投資などで中期的に電力供給を増やす計画を実施して頂きたい。
 

余震も続き、原発事故もこのまま終息してくれるのか、もっと事態が悪化するのか、騒然とした状態が続いておりますね。
本日毎日新聞社エコノミストの3月の臨時増刊号が発刊されました。
表紙タイトルは「金融資産を守る」です。
私も2本、論考を寄せておりますので、ご関心ございましたら是非ご購読ください。
 
アマゾンサイト: エコノミスト3月臨時増刊号 「金融資産を守る」
毎日新聞社のサイト:http://mainichi.jp/enta/book/ecozoukan/
私の寄稿は以下の2件です。
「良いREIT、悪いREITがネット上のデータで分かる」
「手数料に問題、投資信託はお得な金融商品か」
 
 
 
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みなさん、昨日からの大地震と大津波、ご無事でしょうか。
私は大学が春休みなので東京(新宿区)の自宅におり、東北地方の沿岸町村が大津波にのみ込まれていく映像をTVの実況で見ていました。
 
思い出したのは、1970年代に映画化された小松左京原作の「日本沈没」ですね。
それから地球崩壊テーマの映画「2012年」の映像も思い出しました。
 
1995年の阪神淡路地震の時もそうでしたが、東京に住む身としては(近年は半分は京都に住んでいますが)「やがて東京でも大地震は起こる、自分が生きている間にきっとくる」という不安というか、覚悟というか、あるいは諦観のようなものがあります。
 
それでも「地震で自分や家族が死ぬのはいやじゃ、財産を失うのもいやじゃ」と当然思うわけで、そうすると自分が今住んでいる土地の地盤はどうなんだろう、危険度は高いのか低いのか、など思うわけです。
 
地盤の危険度
 
その点でちょっと参考になるのが、「東京の液状化予測図」です。以下サイト
 
これを見ると、地盤が液状化する危険度が色で表示されているので、一目で分かります。
ピンク色の地域が液状化危険度の高い地域です。ピンク地域は東京では湾岸から隅田川沿いの広い地域です。
 
昨日、不動産仲介業者から隅田川沿いの蔵前で築10年未満のマンション物件が出たが、投資目的で買いませんかとセールスを受けました。テナントが入っており、収益物件としてはまずまずの利回りだったのでちょっと心が動きました。
 
ところがこの液状化危険度マップでみたら、ピンク色地域だったので関心は急速に萎えました。そして午後の大地震・・・・、ああ、これは私の守護神様か仏様かわかりませんが、「気をつけなさいね」と囁いてくれているのではないか、などど空想してしまいます。
 
火事・延焼危険度
もちろん、地盤の液状化だけが地震のリスクじゃありませんから、これだけを目安にするのは単純過ぎるでしょうけどね。もうひとつのリスクは火事とその延焼ですね。阪神淡路はこれで死んだ人が増えましたから。その判断は、木造住宅の存在(密集)度合いです。
 
私の地元では、かなり昔に新築住宅は木造が禁止された地域になったので、木造家屋は今ではほとんどありません。最後まで残ったお隣の木造家屋は昨年取り壊されて、5階建てのマンションになりましたので、発火しても延焼リスクは最小限でしょう。
 
もちろん、自分が資産として保有しているマンションには全て地震保険をかけています。わずかな保険料を惜しんで、元も子もなくすのは投資としては愚策中の愚策ですから。
 
津波危険度
 そして今回最大の猛威をふるったのが津波ですが、木造家屋というのは家の土台はコンクリートで固めても、そのうえに木造の構築物がちょこんとのっているだけなんですね。だから津波が来ると水に浮いて簡単に流されてしまうというのが、TVを見ていてよくわかりました。
 東京のウォーターフロントは現在ではほとんど木造家屋はなくなっていると思いますので、同じことは起こらない。しかも、幸い東京は東京湾が外海との出入り口がちいさくすぼんだ形をしているので、津波危険度はかなり低いはずです。
 この点で反対なのが大阪湾です。U字型に外海に口を開いているので、一気に津波で海水が湾の中に流れ込み、U字型の底(つまり沿岸)に達した時に最大の高さに上昇します。大阪湾の沿岸部に住む方々はそれを前提に対策をたてる必要がありますね。住まないですむならそれが一番。
 東海、東南海、南海沖地震も地震学的には「起こるのは時間の問題」とのことですからねえ。
 

今日報道されている中国全人代のニュースが気になった。
 
【北京=比嘉清太】中国の呉邦国・全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員長は10日、北京で開会中の全人代で常務委員会の活動報告を行い、「国家の根本的制度など重大な原則では(共産党は)動揺しない。
動揺すれば、内乱のどん底に陥る可能性すらある」と述べ、共産党の一党独裁体制を堅持する姿勢を強調した。中東などで起きている民衆の抗議行動に倣って、中国各都市で民主化要求集会が呼びかけられていることに危機感を示したものだ。

報告では、欧米式の複数政党制や三権分立などの導入について、「中国の国情にかんがみ、我々はやらない」と断言した。さらに、建国前の「血みどろの奮戦」、文化大革命の「痛ましい教訓」を経て改革開放路線に至った歴史を振り返り、「党の指導の堅持」を繰り返して訴えるなど、昨年よりも共産党支配の正統性を一層強調し、独裁防衛への意思を強く打ち出した内容となった。
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何を考えたかというと、ひとつは経済的な豊かさの絶対水準は低くても格差が少ない社会と、経済的な豊かさの水準は上がっても格差が極端に拡大した社会では、どちらが政治的に安定的だろうかということだ。
人間はやはり絶対的な水準よりも、格差、とりわけ格差の拡大に反応する動物だから、やはり後者の社会の方が不満が高まって不安定になるのかな。
 
今の中国は一人当たりのGDPでは依然途上国的な水準にあるが、格差度合いでは米国に匹敵する超格差社会になってしまった。つまり中南米的な構図だ。 毎年大学を卒業する若い世代の数は2009年で約600万人だから、今の日本の10倍強(日本50数万人)だ。90年代までなら中国の大卒者は文字通り金の卵として就職する先に困ることはなかったそうだが、今は日本をしのぐ就職難になっている。
 
高度成長しても大卒者の増え方が急激過ぎて、彼らの希望する職の供給が間に合わないのだ。アルバイトならともかく、大卒でコンビニのスタッフや工場のブルーカラーってわけにはいかないからね。知的な不満分子の増加と言うのは政治的には、やはり不安定要因を増す。
 
高度成長する経済にもかかわらず、全人代で党の幹部がこれだけ危機感を強調して、引き締めをはかるのはそういう事情があるからだろうか。
(この点で比較すると、日本の1950年代から70年代初頭までの高度成長は、同時に所得格差が縮小したと言う点でユニークだった。)
 
う~ん、強固な支配を維持してきた共産党独裁体制が早晩崩壊するようなことは、やはりちょっと想像しがたい。しかし、ソ連邦のあっけない崩壊も予想しがたいことだった。 1997年7月にタイのバーツが暴落してアジア通貨危機が始まったが、翌年にはそれがロシア危機、ヘッジファンドLTCM破綻、中南米危機に帰結するとは、やはり97年7月の時点では予想し難かったしね。
 
なにしろ先日話題にした経済物理学の先生が説くように「臨界状態」ではちょっとした偶発的な刺激でも相変化が起こるのだから、このアナロジーで考えるとチュニジア、エジプトの変化(刺激)の最終帰結が中国の政治的な大変動であっても不思議はないことになる。(そうなるという必然性もないが)
 
なんて考えていたら、とても小口なんだが、2001年のITバブルの崩壊の後に買って長いこと持っていた中国株の投資信託を売っておこうかなという気分になり、今日解約注文を入れた。まあ、私の資産ポートフォリオの1%に満たない小口なんで売っても売らなくても大差ないのだが、気持ちの問題ね。
 
 
 
 

以前、罵倒を浴びている与謝野馨氏の菅内閣閣僚参加のことを書いた。
 
今日の日経新聞では、「一体改革のウソとマコト」で平田育夫論説委員長がこう書いている。
 
「与謝野氏、藤井氏、柳沢氏らベテラン政治家は社会保障や財政の問題を知り尽くしているに違いない。だからこそ国を憂えて憎まれ役を引き受け、一体改革のシナリオをより現実的とみてそれに乗った。 しかし、政治家の多くは保身が最優先。進んで泥をかぶる人が少なければ、一体改革は無残な結果に終わりかねない。」
 
ああ、私も全く同意見だ。
前原外務大臣の辞任については、米国CSISのジャパンチェアー(元大統領補佐官)のマイケル・グリーンがこう言っている。
 
「日本の政治の風潮はますます、国のために何をしなければならないかではなく、政治家個人の欠点の議論にはまり込んでいるようにみえる。」
 
全くその通りで、多くの方が同じ意見ではなかろうか。
にもかかわらず、政治は政局と政治家の保身の論理だけでどんどん劣化し続けている。
政治家を批判することはたやすいが、彼らを選んでいるのは国民有権者であるという構造をどう考えるか。
悩ましい・・・・。
 
 

日経新聞で今掲載されている成城大学増川純一教授の「やさしい経済学 投資家行動と経済物理学」の(4)(3月2日付)が面白かった。ちょっと引用しよう。
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市場とは、参加者同士が直接的あるいは価格を通じて間接的にコミュニケーションして、その意思決定に相互に影響し合う集団とみなせるだろう。市場がどう機能しているか理解するため、簡略化したモデルを考えたい。
投資家間の結びつきを碁盤にたとえ、それぞれのマス目に市場参加者がいると考える。彼らは東西南北4つの隣接したマス目の参加者の影響を受け、売りや買いを判断する。このように2つの状態や行動(この場合売りと買い)のいずれかをとる各構成要素(メンバー)が隣接した要素と相互に力を及ぼし合うようなモデル構造をイジングモデルとよぶ。
鉄のそれぞれの原子が微弱な磁性をもち、それらのN極とS極の向きが同一方向にそろうと強磁性体(磁石)となる。イジングモデルはこの磁石の性質を知るときによく使われるモデルだ。こうした磁石では原子が相互に及ぼし合う力の強さによって集団(鉄のかたまり)の振る舞いが変わる。原子の磁力がある方向にそろい始めると、周辺の原子もその方向にそろおうとするよう促される。
株式などの市場構造をイジングモデルを使って眺めると、1人の市場参加者の判断が、隣接した参加者のみならず、相互作用の連鎖によって離れた参加者の判断にも影響を与えることが説明できる。参加者の模倣傾向が小さい(個々の模倣する確率が低い)うちは、各参加者が自律して行う投資判断にかき消され、個々の判断が遠くの参加者に及ぼす影響は限定的だ。あちこちに同じ投資判断をもつ隣接した参加者からなる小規模なグループができては消えを繰り返すだけで、ひとつのグループが集団全体に広がることはない。(だからバブルの形成も崩壊も生じない場合、竹中)
 
だが何らかの要因で模倣傾向が強まると、同意見のグループの規模が拡大し持続時間も長くなる。その強さがある境に近づくと、集団には、数人から集団全体の大きさに迫る人数のグループまで、様々な大きさの同意見のグループが混在するようになる。
 
個々の模倣する確率が高まり、ある水準に到達したこの境が初回で説明した臨界状態に達した点(臨界点)だ。臨界点では、平均的な尺度が消失すると述べたが、もうひとつ重要なのは、集団が外から受ける影響に敏感になることだ。株式市場でいえば、相場に影響する経済ニュースに神経質になるわけだ。このことは、臨界状態にある市場が時にはささいな風評で大きく動く可能性も示唆する。つまり何らかの要因で参加者の模倣傾向が強まると市場が臨界状態に達し、暴騰や暴落が起きるのだ。(バブルの形成と崩壊の相当する状態、竹中)
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このインジグモデルによる市場現象のアナロジーは他の書籍でも紹介されているわりと有名な話だが、改めてこのように整理されて説明されると、私の市場観にぴったりと一致する。「なぜ人は市場に踊らされるのか?」(日経新聞出版社2010年)で強調した市場観だ。
 
つまり消費財市場と資産市場では、参加者の行動特性が異なるということだ。資産市場では商品それ自体の効用ではなく、金銭に換算された貨幣価値の無限の増加を目的に、多数の参加者が買おうとする資産が最も値が上がるので、それを買おうと他者依存の意思決定が支配的になる。 そうすると選択と価格変動の間のポジティブ・フィードバックが優勢になり(買うから上がる、上がるから買う)、バブルが形成される。バブルの崩壊は同じくポジティブ・フィードバックが下向きに働く場合だ。
 
こうした市場観はケインズが美人投票の例えで語ったことでもあるが、その後の経済学の発展は、その含意を理論化するのでなく、反対に合理的期待形成、効率的市場仮説に基づいた方向へ進んでしまったということだろう。
 
バブル化した市場がインジグモデルの示唆する臨界状態にあるのならば、ささいな(偶発的かもしれない)変化・刺激で崩壊もおこるので、バブルの認識はできても、それがいつ崩壊するかという予想は合理的には成り立たないことになる。
また今、中東諸国で起こっている反政府運動や政権転覆も同じような臨界状態での急変として考えることができるかもしれない。
 

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