今週号のThe Economistsが“What's wrong with America's economy?”
並びに“Why ever fewer low-skilled American men have jobs"の2つの記事で低スキル労働者の失業が構造的(慢性的)になっている問題を指摘している。
日本も次第にその傾向が出てきているようなので、とりあげておこう。
“Strong productivity growth has been achieved partly through the elimination of many mid-
skilled jobs. America had employment problems long before the recession, particularly
for lesser-skilled men. These were caused not only by sweeping changes from
technology and globalisation, which affect all countries, but also by America’s habit of
locking up large numbers of young black men, which drastically diminishes their future
employment prospects. America has a smaller fraction of prime-age men in work and in the labour force than any other G7 economy. Some 25% of men aged 25-54 with no college degree, 35% of high-school dropouts and almost 70% of black high-school dropouts are not
working”
要するに低学歴、低スキルの労働者層を中心に職を得られない状態が恒常化している。そのことの基本的な原因はITを中心にしたテクノロジーの進歩と、経済のグローバル化が進む一方で、要求されるスキル水準を満たせない労働者をアメリカの教育、社会が大量に生み出してしまっているためだと書き手は判断している。 もちろんカレッジ卒(大学卒)なら大丈夫というわけではない。大学卒=高スキルという保証はないからだ。
記事はあまり詳細に語っていないが、ITを中心にしたテクノロジーの進歩は、相対的に低スキルのホワイトカラーの仕事を大きく減少させていることが複数の研究で明らかになっている。グローバル化は、製造業だけでなく、一部のサービス業も様々な形で海外にシフトしていくことを念頭において書いているのだろう。
もちろんだからと言ってマクロ的に雇用そのものが減少する必然性はないのだが、先進国でビジネスサイドが雇用の条件として要求するスキルの水準と供給される労働者のスキルの水準の間にミスマッチが生じていると書き手は理解しているようだ。
ミドルクラス労働者の2極化が進んでいる状況とも関係している。
この点で日本はまだ総じて雇用が守られている方ではある。以下の図表は同記事のものであり、25-54歳の男性の就業率である。色がうまく出ないので分かりにくいが、一番上96%前後の水準にあるのが日本、一番したの90%割れそうな黒い実線が米国だ。しかし下げトレンドにあるのは同じ。
どうしたら良いのか? 先進国とし経済的に豊かな水準を維持したければ、労働者全体のスキルを技術進歩に見合った水準に引き上げていくしかない、というのが記事の主張。もちろん、容易なことではない。
老世代は見捨てて、世の中をイノベートする若い世代が続々と登場してくれるのが一番良いのだが・・・その点ではGoogleやface bookなど新機軸で世界を席巻するビジネスモデルを創出するアメリカにはまだ望みがある。日本はどうかな?
追記
NY Timesに関連したこういう記事も出ていると友人がコメントしてくれました。
For U.S. Workers, Global Capitalism Fails to Deliver
関連してこういう論文も(以下)。
http://www.cfr.org/industrial-policy/evolving-structure-american-economy-employment-challenge/p24366
